師走になり、冬本番になろうかとしています。
朝外を歩いていると、冷たい空気に触れた手が、ひんやりとしてくるようになりました。
まだまだやせ我慢をするつもりですが、自転車やバイクで通勤の方は、
もうそろそろ手袋の出番でしょうか?
幼い頃このウクライナ民話の『てぶくろ』という絵本は、
子どもながらにとても夢がつまっていました。
こんなおうちに住んでみたい、大きな手袋の中に自分も入って、
外で遊んでみたいと思っていました。
大人になって読み返してみても、何度も憧れる世界観。
今、冬キャンプが注目されていますが、
冬のキャンプで、こんなモコモコ手袋のお部屋があったら楽しいなぁと
思いました。
この『てぶくろ』という絵本の魅力的なところは、
森の動物たちが一匹、また一匹と、てぶくろの住人になっていくのですが、
大人からしたら、人間が落としたてぶくろの中に、イノシシや狼なんて大きな
動物が入れないと知っているから、発想がそれ以上に飛躍しないのですが、
この絵本はリアルに、てぶくろの縫い目が弾けそうになっている様子や、
少し窓を作ってみたりしながら、中にぎゅうぎゅうで、動物たちが、
身を寄せ合っている様子が描かれていて、
てぶくろに大きな動物が入れるという夢と、
身を寄せ合って、とても暖かそうで、仲間と過ごす幸せな時間が
絵本の魅力としてあふれ出しているように思います。
冬にお勧めしたい一冊です。
3歳ぐらいから読み聞かせで楽しめる絵本かなと思います。
絵を描いている著者のエウゲーニは、シベリアに生まれ、大自然の中で、
動物たちと親しんで育ってきたそうで、その作風にはうなずけるものがあります。
『てぶくろ』の中の空の絵が冬の混沌としたグレーの重い雲に覆われた空で、
下のほうが赤紫色の空にグラデーションされているのですが、
とても寒い季節、土地なのが伝わってきますし、木の枝につもった雪も、
絵と思えないリアル感があります。
冬暖かいコタツ、お布団の中に入って、親子で読みたい一冊です。
《著者紹介》
絵:エウゲーニ・M・ラチョフ 1906~1997
シベリアのトムクスに生まれる。幼年時代をバラビンスカヤ草原の大自然の中で
鳥や動物と親しんで育つ。クバン美術師範学校、キエフ美術研究所で学んだのち
1030年にキエフの出版所クリトゥーラに務め、編集者シベルスキーに子どもの
本の絵について教わる。1935年からモスクワ国立児童図書出版所絵画部の編集長
を務め、数々の動物絵本をうみだず。ライプツィヒ国際図書展銀メダル、
ロシア連邦共和国人民芸術家賞を受賞。主な作品に『マーシャとくま』
(福音館書店)『麦の穂』(ネット武蔵野)などがある。
文:内田莉莎子(うちだりさこ)1928~1997
東京生まれ。早稲田大学露文科卒業。1964年ポーランドに留学。ロシア、
ポーランド、チェコなどのすぐれた児童文学・昔話・絵本を翻訳、紹介した。
主な訳書に、童話『きつねものがたり』『ぞうのドミニク』『ロシアの昔話』
絵本『おおきなかぶ』『マーシャとくま』『もぐらとずぼん』
『しずくのぼうけん』『くった のんだ わらった』(以上福音館書店)など多数。
※絵本より引用
【作:ウクライナ民話 絵:エウゲーニー・M・ラチョフ 訳:内田莉莎子
出版社:福音館書店】