よく、下に兄弟が生まれると、上の子が赤ちゃん返りしたり、
夜泣きをしたり大変と聞きます。
今までひとじめできたお母さんとの時間、自分が使っていたおもちゃや、
衣服を兄弟へゆずる葛藤。いろんな葛藤を抱えながら、
少しずつお兄さん、お姉さんになっていくのかもしれません。
『ピーターのいす』は、ピーターに妹が生まれて、
今までピーターが使っていた小さなダイニングのいすや、ゆりかごや、
ベビーベッドなどが生まれた妹の元に行ってしまう戸惑いと、
突然、お母さんを奪われたような寂しさがあふれ出し、葛藤が描かれています。
ピーターが使っていた家具たちがブルーからピンクにペンキを塗り替えられ、
その作業を素直に手伝うことが出来ないでいました。
小さないすを、ピーターはこっそり持ち出し、家の外へ出ます。
そして昔使っていたいすに、そっと腰を下ろそうとすると、
ピーターのおしりはいすに、座ることができませんでした。
そこで自分の使っていた家具を妹に譲ることを決意します。
お兄ちゃんになる葛藤、心の動きが繊細に描かれています。
『ピーターのいす』は、兄弟が生まれてくるときに、読み聞かせしたい絵本です。
出産祝いを渡す際に、上の子へのプレゼントにもいい一冊かと思います。
《著者紹介》
1916~1983。ニューヨーク市の下町に生まれ、独学で絵の勉強をする。
子どもの本の挿絵を描き始め、1963年に文・絵共に自作の絵本『ゆきのひ』で
コルデコット賞(アメリカの年間最優秀絵本賞)を受賞。
以後『ピーターのいす』『ピーターのくちぶえ』等、十数点の絵本を発表し、
子どもの心の内面を新鮮な目で捉え、詩情ゆたかに表現した絵本作家として、世界的
に高く評価された。
訳者:木島 始(きじま はじめ)
1928年京都市に生まれ、東京大学英文科を卒業。詩人・作家・英文学者として
幅広く活躍。自作の詩集の他、現代詩のアンソロジー『地球に生きるうた』の
編集、創作に『やせたぶた』『考えろ舟田!』絵本の翻訳に『はなをくんくん』
『ゆきのひ』等 2004年没。
※絵本より引用
【作・絵:エズラ・ジャック・キーツ 訳:木島始 出版社:偕成社】