絵本でカラフルな色使いの絵本も大好きなのですが、
大人になってからはモノクロ絵本の良さも感じています。
かえって色彩がないモノクロの世界の方が、
読んでいて、色彩の豊かさや、感情の機微を感じます。
頭の中で読みながら、その絵本の世界にどっぷりとつかり、
その情景を思い浮かべ、想像の中で色をのせているのかもしれません。
それがまた楽しかったりします。
今日ご紹介する太田大八さんの作品『かさ』もモノクロ作品になります。
女の子が持つ傘だけが赤色で、あとの景色、人、道、雨、車などはすべて墨色一色で描かれています。
そして文章がありません。
お話としては、雨の日に女の子が駅にパパを迎えに行く道のりが、
絵だけで表現されています。
でもなぜか多色で描かれた絵よりも、より鮮明に、鮮やかに、
女の子のパパに会えるまでのドキドキした気持ちや、
道がちゃんと合っているか緊張している様子など、さまざまな思いがより一層
伝わってくる作品です。
いつも少しがっかりする雨の日が、愛しく思える、好きになれる絵本です。
言葉もなくて、色も限られているのに、こんなに心揺さぶられて、
何か読んだあとの余韻が残る絵本も少ないです。
貴重な体験でした。
子どもから大人に、幅広い年齢層の方におすすめな絵本です♪
《著者紹介》
作・絵 太田大八
1918年、長崎県に生まれる。
児童出版美術家連盟理事として活躍中。日本童話会員、小学館絵画賞、
国際アンデルセン賞絵画部2位を受賞。最新作品に『のぼっていったら』
『まほうこうじょう』等がある。東京在住。
※絵本より引用
【作・絵:太田大八 出版社:文研出版】