数多ある絵本の中でも、一番じゃないかというぐらいに、カラフルで
一目でエルマーとわかる。絵本の内容を知らなくても、エルマーと名前が出てくる程、
キャッチーな表紙です(*^-^*)
本の中身はというと、予想していたお話を大きく裏切ってくれます。（いい意味で）
あるところに、たくさんのぞうが住んでいました。
わかいぞうや、としをとったぞう、やせたのや、ふとったのや、のっぽのぞう。
でもみんなぞういろをしたぞうです。でもエルマーだけは、みんなとちがって、
パッチワーク柄のぞうです。
きいろに、オレンジ、あかに、ピンク、あおくて、みどりで、むらさきに、
くろくて、しろい、ぞういろじゃない ぞうが エルマー。
エルマーはとてもたのしいぞうでした。
ふぜけることがだいすきで、ほかのぞうたちも、エルマーがいると、
ついつい いっしょに ふざけてしまいます。
エルマーがニコニコとわらえば、みんなもニコニコ。
あるよるのこと、エルマーはかんがえごとをしていて、全くねむれませんでした。
『どうしてぼくだけ、みんなとちがうんだろう？だいたいパッチワークのぞうなんてへんだよね。だからみんな わらうのかな、ぼくのこと。やんなっちゃう。』
あさになると、エルマーはほかのぞうたちが おきだすまえに、
こっそりでかけました。
ジャングルを歩き、ずいぶん、あるいて、やっと見つけました。
大きな木です。これを探していたのです。
グレーの木の実のがたくさんついた木です。
ユサユサとゆすって、木の実をじめんにおとし、
エルマーはごろん、ごろんと転がり、グレーの実を体につけて、
パッチワークの体の色が見えなくなるまで、ぬりました。
ジャングルを歩いても誰もエルマーだと気づきません。
ぞうたちのところへ帰っても、だれもエルマーだとは気づきませんでした。
その時、あまぐもがやってきて、雨がふりだしました。
みるみるエルマーの体にぬっていたぞういろが流されていき、
ほかのぞうたちはようやくエルマーのいたずらに気が付きました。
みんな大笑いしながら、『今日をエルマーの日にしよう』と言いました。
毎年、エルマーの日になると、ぞうたちはいろんな模様にかざりたて、パレードをし、
エルマーだけはふつうのぞういろに変身することにしました。というお話。
私がこの作品を読んでいて、意外だったのは、
みんなと違うエルマーを、仲間外れにしたり、からかったりしなかったことです。
みんなパッチワーク色のエルマーをありのまま受け入れ、愛しているけど、
エルマーの日を作って、その違いをみんなで楽しんで、お互いの存在を認め、
大切にしたところが素敵です。
エルマーも自分が人と違う部分を欠点と感じていましたが、
それはまた誰かの目には魅力だったり、強みになるということを、
仲間から教わりました。
よくあるハッピーエンドの絵本ではなくて、ずっとハッピーなところが
とてもいいと思いました。
現実ではまだ排他的な世界もあるけれど、少し視点を変えるだけで、
現実は大きく変化していくことを教えてくれる一冊。
ここがきっとこの絵本が長く愛される点だと思いました。
《著者紹介》
デビッド・マッキー
1935年イギリス南デボン州生まれ。美術学校在学中から風刺漫画の仕事を始め、
卒業後には雑誌「パンチ」や新聞などに絵を描く。1964年初めての絵本「TWO CAN TOUCAN」を出版。代表作「ぞうのエルマー」は20か国以上で出版されている。
また絵本のほかに、アニメーションの制作などにも取り組んでいる。
南フランス・ニース在住。
訳：きたむら さとし
1956年東京生まれ。1979年にイギリスに渡り、数年後より絵本を作り始めた。
ハーウィン・オラム氏とのコンビでつくった「ぼくはおこった」（評論社）マザーグース賞、絵本にっぽん賞特別賞を受賞。そのほかの作品に「やねうら」（文/コリン・マクノートン 訳/柴田元幸）「ブーツのぼうけん」（ともに小峰書店）など多数。
ロンドン在住。
※絵本より引用
【作・絵：デビッド・マッキー 訳：きたむらさとし 出版社：BL出版】
