ロンパーちゃんは、まちで風船をもらいました。
飛んで行ってしまわないように、ゆびにくくりつけてもらい、
風船と一緒におうちに帰って来れました。
おうちについたら、もう安心。指のヒモをほどくと、
ポーンポーンと天井まであがり、ロンパーちゃん届きません。
ママが風船のヒモをひっぱり、ロンパーちゃんにわたします。
あらあらまた天井へ。
ママはスプーンのヒモをくくりつけました。
そうしたらふうせんはちょうど、ロンパーちゃんと同じ背丈になりました。
ふうせんをつれてお庭で遊びます。
おままごとしたり、ふうせんに花飾りをつけたりして遊んでいると、
突然強い風が吹き、風船は飛ばされ、木にひかかってしまいました。
ママは風船をとろうとしましたが、枝にひっかかりうまく取れません。
暗くなってきて、もうあきらめましょうと家に入り、
ご飯を食べていると、ロンパーちゃんは涙をこぼし、
風船と一緒にごはん食べる約束したのに、歯磨きもして、一緒に寝る約束をしたのに、
と泣き出します。
ママはあしたの朝もう一度とってみましょうと話しました。
ロンパーちゃんはベッドに入るときに、そっと窓からお庭をのぞくと、
黄色い風船がまるでお月様のように見えました。
というお話です。
子どものときに風船をもらったときの、あの幸福感が蘇ってきます。
プカプカと空に浮く風船が不思議でたまらなくて、つい手を放してしまったときに、
自分の手には届かないほど、遠く青い空に吸い込まれて、そのうちに小さくなった
風船が消えて見えなくなってしまったときの切なさが思い出されました。
小さな子どもらしいポテっとした体形や、ちょっとした手のしぐさ、
体の動き、表情が、忠実に描かれていて、たまらなく愛らしくて、愛しい作品。
《著者紹介》
酒井駒子(さかいこまこ)
著書に『リコちゃんのおうち』『よるくま』(ともに偕成社)、『よるくま クリスマスのまえのよる』(白泉社)、『ぼく おかあさんのこと・・・』(文渓堂)などがある。
※絵本より引用