絵本『アンジュール』は途中文章が一度も出て来ません。
ずっとデッサンで描かれた絵が語りかけてきます。
ここに登場する犬に視点を置いて、描かれているのですが、
途中犬は、家族の車から投げ捨てられてしまいます。
その日から突然野良犬となった犬は、元の家族のところへ戻りたくて、
必死で臭いをかぎ、走ります。
途中車にひかれそうになりながら、元の場所に戻ろうと奮闘する姿が、
デッサンの絵だけで表現されており、
広い浜辺まできて、見知らぬ親子の姿を見つめていたり、遠い景色を見ているだろう
ことが犬の背中からひしひしと伝わってきます。
絵を見ているだけで、涙がでそうになります。
犬は路地裏や町の中も探し周り、途中通行人に叱られながら、
そして途方に暮れていると、あちら側から、独りぼっちの少年に出会います。
少年も少しずつ犬との距離を縮めながら、犬は思わず男の子に飛びつきました。
やっと出会えたかのように。
きっと少年も犬も同じ気持ちだったのでしょう。
再び、人と犬が、気持ちが通い合った瞬間でページが終わります。
大人に読んでもらいたい絵本です!
《著者紹介》
作者:ガブリエル・バンサン
ベルギーのブリュッセルに生まれる。
ブリュッセルの美術学校で絵画を学び、以後長期にわたりデッサンに専念した。
この『アンジュールーある犬の物語』は、彼女の処女作で、まさに彼女の特長を生かしきった鉛筆デッサンによる絵本である。このほか、木炭デッサンの絵本として『たまご』インクによるデッサン絵本の大作『セレスティーヌーアーネストとの出会い』(いずれもボローニャ国際児童図書展グラフィック賞)とつづき、鉛筆画の大作『天国はおおさわぎー天使セラフィーノの冒険』や『マリオネット』などがある。
水彩画による作品に『くまのアーネストおじさん』シリーズ『ちっちゃなサンタさん』
『テディ・ベアのおいしゃさん』などがあり、いずれも、その線描の確かさを最大のとする。また、日本オリジナル絵本として『ナビルーある少年の物語』『ヴァイオリニスト』がある。2000年9月ブリュッセルにて永眠。
※絵本より引用
【作:ガブリエル・バンサン 出版社:BL出版】