今まで始発電車に乗ったことがあるのは、1度か2度あったかな?
ぐらい記憶に薄い。
夜明け前の外は、空気も澄んでいて、まだ町が起き始める前で、
道を歩く人も少なく、なんだか特別なことをしているような感覚で、
少し誇らしげで、ドキドキ、ワクワクしていたように思う。
絵本『しはつでんしゃ』は、ぼくとおとうさんが、ある冬の寒い日曜日に、
ほっかいどうへ引っ越ししてしまうお友達を見送りに、
始発電車に乗って、空港へ行く物語です。
外はまだ真っ暗。商店街もひっそりとしています。
駅に着くと、電気がまぶしいぐらいこうこうと付いていて、
でも改札にも人はおらずシーンと静まり返っています。
ホームに着くと、そこには人がいないかわりに、鳩がせかせかと歩いています。
新聞を売店に配達に来たお兄さんが見えます。
始発電車が来ました。運転席から景色が見たくて、先頭車両まで行きましたが、
カーテンが閉まっていました。
運転手さんが、『ごめんね、外が暗い時には、電車の中のあかりが、ガラスにうつって、うんてんがしにくいんだ。』と説明してくれました。
窓から景色を見ることにしました。
電車が出発しました。まだまだ外は暗いです。
いよいよ飛行場につきました。
お友達に会えるかドキドキしながら、待ち合わせ場所に向かいます。
待ち合わせ場所にいくと、お友達と家族がいました。
噴水の前に座って、何を話すわけでもなく、お互いにモジモジ、ソワソワしながら
出発の別れの時間を待ちます。
とうとう飛行機にお友達が向かう時間になりました。
『夏休みに、ほっかいどうへ遊びにきてね。』とお友達がいいました。
元気に手をふって、見送り、まだ朝が早く展望台はあいていなかったので、
レストランから、朝ごはんを食べながら、滑走路を見つめていました。
というお話です。
始発電車でしか見えない景色、駅の風景、人の流れ、
そして始発電車に乗った目的である、仲良しのお友達との別れ、
ちょっと寂しくて、いつもと違う情景にソワソワしている、
揺れ動く子どもの気持ちが、電車とともに表現されています。