ずっと気になっていた絵本。
絵本をさっそく開いてみると、文章は一言もなく、懐かしいようで、
全く知らない世界がそこにが広がる。セピア色の無声映画を見ているような感覚。
ある男は妻と娘の元を離れ、一人で旅立つことに。
大きな革カバンに3人で写した家族写真を大事に白い布で包み、出発の身支度をする。
最後3人で一緒に朝ごはんを食べ、家を出て汽車に乗る。
娘にはハットの中に隠していた折り鶴を手渡し、妻と名残惜しそうに別れる。
汽車を降りて、大きな船を乗り継ぎ、見たこともないような世界にたどり着く。
そこは食べ物も、ペットも、動物も、言葉も、暮らしも、何もかも見たことも、
聞いたこともないような初めて見る世界が広がる。
なんとか住む家を見つけ、新しい仕事を見つけ、友人もできる。
生活が安定した頃、戦争が起きる。
戦争から命からがらなんとか逃げ切り、また新たな場所へ移動する。
仕事を新しく見つけ、なんとか生活が成り立った頃、
家族へ手紙を書く。そして家族を呼び寄せ、また3人の穏やかで幸せな
生活が始まる。
この絵本は移民の人生を描いている。全く知らない場所へ、豊さや、希望
夢を抱いて、親しんだ町を出て、新しい地を目指す苦労や葛藤が、
描かれている。
移民として、知らない場所での暮らしは、どこか今までの暮らした街と似ているようで、
まったく見たことがない、知らない世界に迷いこんだような気持ちなのかもしれない。
アラバイルは到着という意味。どこへ到着したことを示しているのだろう?
読む人にとって、その意味は違ってくるのかもしれません。
とても美しい映画のような絵本です。
そして思った以上に大型本で、驚きました(*^^)v一本の映画を観たような大作です。
大人におすすめの一冊です!
《著者紹介》
作者:ショーン・タン
1974年、オーストラリアのパース郊外に生まれる。
現在、メルボン在住。イラストレーター、作家。舞台制作や映画制作も手がける。
ショート・アニメーション『The Lost Thing』が第83回アカデミー賞短編アニメーション賞受賞。
ほかに『レッドツリー 希望まで360秒』Tales from Outer Suburbia(小社より刊行予定)
などがある。
※絵本より引用
【作・絵:ショーン・タン 訳:小林美幸 出版社:河出書房新社】