マーガレットという少女がある夜お星さまにお願いしました。
自分の名前をつけた船に乗って、海を渡り、
船の中で誰か仲よしの人と一緒に暮らしたいのと。
そのまま眠りにつくと、目覚めた時、本当に船の上にいました。
願いが叶ったのです。夢のようです。
一緒に船の上に乗っていたのは弟のジェームス。
デッキの上ではおんどりが鳴きながら、歩いていて、
デッキの一番上には小さな畑もありました。
ヤギやヒヨコ、リンゴ、ももやオレンジの木まで何でもあります。
さっそく朝ごはんにオレンジを一つもぎとりました。
マーガレットは嬉しくて、おおはりきりで、船の上を掃除したり、
昼ご飯の支度をしたり、弟の世話に、大いそがしです。
お昼はお天気が良かったので、デッキの上でお弁当を持って、
ピクニックをしました。
夕飯は何にしようか?と考えていたら、良いことを思いつき、
バスケットにおいしいものをいっぱい収穫して、
海に網を下ろして、えびやきんいろのスズキをとり、
ちいさなストーブの上のおなべに、たくさんのやさい、魚介をいれて、
ぐつぐつとゆっくり煮込みました。
今晩はうみのシチューです。
やがてあたりは暗くなってきて、風も出て来ました。嵐の予感です。
ほを下ろして、船室に戻ると、オーブンでマフィンを焼き、
桃を切って、シナモンをふりかけ、一緒にオーブンにいれました。
あたたかいヤギのミルクで体もポカポカです。
夕ご飯のあとは、マーガレットがバイオリンを奏で、
ジェームスをゆりかごに寝かせました。
マーガレットもふかふかのベッドに入り、長い一日が終わりましたというお話です。
小さな子どもが、船で大冒険をするお話。
船室には畑もあり、陸上の動物も何匹か連れて、果物の木や、草花が生い茂り、
まるで小さな海の上の島に住んでいるよう。
絵本の中で出てくる食事やおやつがとても美味しそうで、
読んでいてわくわく、幸せな気持ちになる。
途中嵐がきても、小さな女の子が一人で、船を守ろうと、
おとうとを守ろうと奮闘する姿も勇気を与えてくれる。
夢がこれでもかっというぐらい詰まっている。
絵本の中もモノクロページと、極彩色のページを使い分け、
読者の五感を引き出すような演出がされていて、興味深い。
例えば船室で食事をつくっているページはモノクロのページになっていて、
料理を想像し、おいしい香りだったり、料理の味だったりを、
自由に読む側が想像して楽しむことができる。
《著者紹介》
作:アイリーン・ハース
アメリカ在住のデザイナー、イラストレーター。ニューヨーク市生まれのニューヨーク育ち。劇場の舞台、陶器、壁紙、生地、レコードジャケットなど、
さまざまなジャンルの仕事に才能を発揮する。雑誌や広告に描いたイラストレーションが編集者の目にとまり、すすめられて絵本の制作をするようになった。
1975年刊の本書は、初めて彼女自身が物語を書いた、アメリカでも評判の高い絵本である。絵本に『ベスとベラ』『つきあかりのにわで サマータイムソング』(ともに福音館書店)などがある。
※絵本より引用
【作・絵:アイリーン・ハース 訳:内田莉莎子 出版社:福音館書店】