★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

せかいいち うつくしい ぼくの村

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せかいいち うつくしい ぼくの村

舞台はアフガニスタンにあるパグマン村。

 

すもも、さくらんぼ、あんずなどの木のみがたわわに実り、

 

甘い香りに満ちた小さな村のお話。

 

ヤモの国では、戦争が続いており、兄は戦争の戦いに兵として行きました。

 

美しい自然と、動物たち、そこで暮らす人々の暮らしが描かれています。

 

パグマンのさくらんぼはせかいいち あまい たいようのようなさくらんぼ。

 

ヤモは戦争に行った兄に変わって、お父さんと一緒に収穫したさくらんぼと、

 

すももを市に売りにでかけます。

 

市には絨毯を売るお店、シシカバブを売るお店、パンが焼ける香ばしい香り、

 

ひとの いきかう 大きな広場にいよいよ店開きです。

 

ヤモはロバにさくらんぼをのせて、一人で、バザールへ売りにいくと、

 

さくらんぼを求めて近づく親子や、戦争で片足を失ったおじさんが、

 

『バクモンのさくらんぼはやっぱり世界一だ。』と嬉しそうに買っていってくれました。

 

さくらんぼは全部売れ、お父さんがスモモを売る場所まで帰りました。

 

さぁお昼にしようかと、食堂にはいったところで、

 

となりに座っていたおじさんが、南の方の戦いはかなりひどいという。

 

モスクから祈りが聴こえてきます。

 

すもももすべて売り、帰りに子羊を一頭買って、村へと帰ります。

 

美しい夕日が砂漠に陰影をつけ、とてもきれいです。

 

兄が春に帰ってきたら、新しい家族が増えたことを話そうとヤモは思いました。

 

美しい村の風景が続く絵本の中に、どことなく戦争の影を感じさせます。

 

絵には直接戦争を思わすような生々しい描写は一切ありません。

 

でも、兄は戦争に出かけておらず、ヤモは兄がしていた仕事を手伝っていたり、

 

さくらんぼを売る中で出会った、片足を戦争で失ったおじさんとの出会いだったり、

 

食堂で隣り合わせたおじさんから聞いた、南の方はかなりひどいみたいだという話など、

 

ずっと兄の不在の中、兄に想いを馳せる度に、戦争が近づいてきます。

 

そして、絵本の最後の文には”このとしのふゆ、村は戦争で、はかいされ、いまはもうありません。”

 

と一文が書かれています。

 

私がテレビなどの情報から知っているアフガニスタンは、

 

爆撃をうけたかつて建物だったであろう瓦礫の山。そして立ち込める砂埃。

 

動物、人、植物、作物、豊かな自然は、すべて私の知らないアフガニスタンでした。

 

この絵本に広がる美しい村は、戦争とはほど遠い程に、美しく平和な村ですが、

 

もうその村は、どこにもないのです。

 

戦争の中で、人々の日々の暮らしが当たり前のようにありました。

 

木のみや作物が春になるとたわわに実り、豊かな自然、草原、動物が、

 

ともに暮らしていました。

 

春を待たずに、兄が帰るはずの故郷は、消えてしましいました。

 

子どもの読み聞かせに、子どもはちょっと困惑したような表情でした。

 

『家族みんなで一緒に毎日いられて、ごはんを食べて、遊んで、毎日幸せだね。』と

 

話しました。幸せとは何か?戦争で失うものの大きさを、

 

親子で考える機会をもらいました。

 

《著者紹介》

小林豊(こばやしゆたか)

1946年、東京深川に生まれる。立教大学社会学部を卒業。

イギリス留学中に画家を志す。

1979年、日展初出品で入選。

1983年、『上野の森美術館』特別優秀賞受賞。

1970年代初めから80年代初めにかけて、中東・アジアをたびたびおとずれる。

その折の体験が、作品制作の大きなテーマとなっている。

著書に、『なぜ戦争はおわらないのかーぼくがアフガニスタンでみたことー』(ポプラ社

※絵本より引用

【作・絵:小林豊 出版社:ポプラ社

 


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