★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

にぐるま ひいて

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19世紀初めのニューイングランド地方の1年の暮らしを丁寧に描いている一冊。

 

10月になると、家族みんなで、その年に収穫されたじゃがいも、りんご、

 

はちみつとハチの巣、かぶと、キャベツや、

 

収穫したものに手を入れた、保存食、手で編んだショールや、手袋、

 

りょうりナイフでつくった しらかばのほうき などいっぱいを荷車に積んで、

 

うしをひいて、10日がかりで、

 

おかをこえ、たにをぬけ、おがわをたどり、農場や村をいくつもすぎて、

 

ようやくポーツマスの市場へ着く。

 

市場では、羊の毛を売って、お母さんがつくったショールや、娘が作った

 

手袋、ろうそく、しらかばのほうき、じゃがいも、リンゴ、はちみつ、

 

ハチの巣、かぶやキャベツも、全部売った。

 

空っぽになった荷車も全部売れ、

 

最後に荷車をひいてきた牛も売り、ポケットをお金でいっぱいにして、

 

父さんはポースマス市場をあちこち歩いた。

 

だんろに下げる、鉄のなべを買い、娘にイギリスの船で運ばれた、

 

刺繍針を買い、息子にはほうきをつくるための、バーロウナイフを買った。

 

そして家族みんなに、うすみどりいろのはっかキャンディを買った。

 

買ったもの全部を、鍋に詰めて、残ったお金をポケットに入れて、

 

農場や村をいくつもすぎ、おがわをたどり、たにをぬけ、おかをこえ、

 

家族みんなが待つ家にようやく戻った。

 

むすめはさっそく、新しい刺繍針で、刺繍にとりかかり、

 

息子はナイフで木を削り、

 

新しいなべで、ゆうはんをつくり、おしまいにみんなでキャンディーをなめた。

 

そして父さんは、だんろの前に座って、

 

納屋にいるわかうしのために、新しい手綱を編んだ。

 

冬の間、父さんは新しいくびきをけずり、新しい荷車の板をひき、

 

そして屋根板をきりだした。

 

母さんは冬の間、あまを リンネルにしあげ、

 

娘は冬の間、リンネルに刺繍をし、

 

息子は冬の間、しらかばからほうきをつくり、

 

そしてみんなでろうそくをつくった。

 

3月にかえでから樹液をとり、煮詰めて、かえでざとうをつくった。

 

4月にひつじの毛をかりとり、糸を紡ぎ、おりものや編み物をした。

 

5月みんなは、じゃがいもやかぶ、キャベツを植える。

 

りんごの花がさき、蜜蜂は目を覚まし、蜜を作る。

 

古きアメリカのどかな田園風景の中、四季の美しさと、

 

豊な自然の中で、育まれる人々の暮らしが、

 

美しく、丁寧に描かれている。

 

いろいろと便利になった世の中、簡単に大量に作り出せる世の中、

 

手作業で一つずつ、何もかも手作りしていた時代のお話です。

 

今あまり見かけない風景に、懐かしさと、温もりを覚えます。

 

《著者紹介》

文:ドナルド・ホール

自分の作品を朗読して国中を歩く詩人として知られている。『にぐるまをひいて』

について、彼は次のように語っています。

『そもそも、この話は、近所に住んでいたいとこから聞いたものです。そしてそのいとこは、幼い頃、ある老人から聞き、またその老人は子どもの頃に、大変なお年寄りから聞いたのだそうです。語り継がれるこの伝統のすばらしさ!』

ホール夫妻は、ニューハンプシャー州ダンベリーに住んでいます。

 

絵:バーバラ・クーニー

1917年にニューヨーク市のブルックリンに生まれ、スミス・カレッジとアート・スチューデント・リーグで美術を学びました。

これまで80点以上の絵本をかき、1959年に『チャンティクリアときつね』(ほるぷ出版)、1980年『にぐるまひいて』でコルデット賞を受けました。2000年没。

※絵本より引用

【作:ドナルド・ホール 絵:バーバラ・クーニー 出版社:ほるぷ出版

 

 


にぐるまひいて