いずみがもりにはたくさんのカラスが暮らしていて、
山の木の上にからすのパン屋がありました。
そのカラスのパン屋さんに4羽の赤ちゃんが生まれ、
パパとママは早起きして、パンを作りますが、その途中で赤ちゃんが泣いたり、
ご飯を上げたり、お世話に追われ、パンが焦げたり、生焼けになってしまったり、
てんてこまいの毎日。
毎日お母さんがお店の掃除をしていましたが、
赤ちゃんが生まれてからは掃除する時間もありません。
だんだんとお客さんが来なくなり、生活はますます苦しくなりました。
からすのお父さんも、お母さんも心配しましたが、
子どもはすくすくと元気に育っていきました。
お父さんもお母さんも必死に働き、
焦げたパンや、生焼けの売れないパンは、子どもたちのおやつに。
子どもたちがいつものようにパンを食べていると、森のからすの子どもたちが
集まって来て、他のお友達にパンをあげました。
お友達は美味しいと、今度買いに行くね!と約束してくれました。
カラスのパン屋さんは、子どもたちのためにたくさんのパンを焼きました。
翌日、大勢の子供たちがおやつパンを買っていきました。
もっといろんな種類のパンが食べてみたいと、要望を受け、
からすの親子は、どこにもない、変わった形の美味しい、めずらしいパンを
考えました。
こうばしい匂いが森を包み、
カラスがいっぱい集まってきました。
カラスのパン屋さんは大繁盛で、立派なパン屋さんになりましたというお話。
とにかく、見たこともない、思いつかないようなパンがたっくさん登場します。
子どもはテレビパンと、バイオリンパンを気に入っていました。
私は歯ブラシパンが気になりました笑
この絵本はパンの美味しいさ、ユニークさだけでなく、
子育てパパ&ママのリアルな日常が描かれています。
子育てに忙しくて、いつもはキレイにできていたお店の掃除が行き届かなかったり、
パンが焦げたり、はんやきだったり、
フルで働けない分、収入が減ったり、でも子どもは心配をよそに、
たくましく元気に育っていく。
途中は親の私が共感しながら、読んでいました笑
そして子どもたちは、いつしかお店を手伝ってくれるまでに成長し、
子どものやわらかい発想から生まれた新しいパンたち。
何よりの財産です。
今まで出会ったことのないパンを見つけ、親子で楽しく読むだけでなく、
子育て世代の親を応援してくれるような絵本です。
子ども、パパ、ママみんなが元気に笑顔になれる一冊です。
《著者紹介》
1926年福井県武生に生まれる。
1948年東京大学工学部応用化学科卒業。工学博士。技術士(化学)。民間化学会社研究所勤務のかたわら、セツルメント運動、児童会活動に従事。1973年会社を退社した後は、児童文化と児童問題の研究のかたわら、テレビのニュースキャスター、大学講師、
海外での教育実践活動などに従事。また児童文化の研究者でもある。
作品は、物語絵本、科学・天体・社会関係の知識絵本、童話、紙芝居など多岐にわたり、500点以上。主な作品に『かこさとしおはなしのえほん』シリーズ『ピラミッド』
『うつくしい絵』(偕成社)、『だるまちゃん』シリーズ『かわ』『梅』『とこちゃんはどこ』(福音館書店)、『かこさとしからだの本』シリーズ(童心社)、『伝承遊び考』(小峰書店)などがある。2008年菊池寛賞受賞、2009年日本化学会より、特別功労賞を受賞する。
※絵本より引用
からすのパンやさん (かこさとしおはなしのほん) [ 加古里子 ]