★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

よあけ  *ユリー・シュルヴィッツ

 

 

 

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最初から最後まで、丸い円の中に描かれる、光と影。

 

のぞき穴から、そっとのぞくように、

 

ぽっかりと開いた穴が、閉じたり、開いたりしながら、

 

夜明けの世界がゆっくりと広がり、近づいてきます。

 

夜明けを静かに待つおじいさんと、孫。

 

湖のほとりは、音もなく、とても静かに凪いでいます。

 

月明りがぼんやりと、水面を揺れながら。

 

そよかぜが吹くたびに、水面に小さなさざ波が立ち、

 

月夜が揺れ動く。

 

時折、カエルが飛び込む音が聞こえ、

 

草と草がそよ風にぶつかる音がかすかに聞こえてくる。

 

白く、ぼんやりと靄がたちこめている。

 

おじいさんがもうすぐ夜明けだど、毛布にくるまって寝ている孫を起こす。

 

ふたりは水を汲んできて、焚火で冷えた体を暖める。

 

湖にボートを押し出し、しずかに漕ぎ始める。

 

そのとき、

 

急に山も、湖も、色鮮やかな緑になった。

 

ユリー・シュルヴィッツの作品で一番好きな作品です。

 

夜明け前の静けさ、水面に浮かぶさざなみ、

 

夜明けまではほの暗い中に、月あかりだけが頼りで、

 

しだいに空が白んでいき、火をおこし、やまとみずうみが

 

今までの世界とは180度違う色彩の艶やかさで描かれ、

 

目を奪われる。

 

絵本から光を放っているように、まぶしくて思わず目を細めてしまいそうです。

 

 

《著者紹介》

作:ユリー・シュルヴィッツ

1935年ポーランドワルシャワで生まれました。

4歳で第2次大戦にあい、各地を転々としたのち、1959年にアメリカに渡りました。

そこで2年間ブルックリンの絵画学校に学び、やがて子どもの本の仕事を始めました。

これまでに『空とぶ船と世界一のばか』(コールデコット賞受賞、岩波書店刊)や

『あめのひ』(福音館書店)など、すぐれた絵本を数多く作っています。

東洋の文芸・美術にも造詣が深く、この絵本『よあけ』のモチーフは、唐の詩人柳宗元の詩『漁翁』によっています。

※絵本より引用

【作・絵:ユリ・シュルヴィッツ 訳:瀬田貞二 出版社:福音館書店

 


よあけ (世界傑作絵本シリーズ)