★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

紙のむすめ

f:id:kiko_book:20210705094158j:plain

 

表紙に惹かれました。

 

切り絵は、ハサミやカッターナイフの刃で、紙を切って生まれてくる世界。

 

刃で切ったとは思えないほど、女性の身体の柔らかいラインや、

 

気は植物の繊細な曲線が見事に表現されていて、

 

真っ白な紙なのに、色鮮やかに、そして、

 

そこに吹き抜ける風までを感じられる奥行きのある絵本です。

 

白い紙の丘に、屋根も、窓も、壁も、真っ白な小さな家。

 

白い紙から生まれた娘が住んでいます。

 

庭の草花に水をやったり、となりの丘を眺めたりして過ごしています。

 

刃物で切ったとは思えないほど、草花の柔らかい曲線や、むすめのカールした髪型、

 

ジョウロから出る水の流れる道筋まで、とても柔らかく、

 

繊細で、草花が風に揺れる動き、やわらかな風を感じられます。

 

丘には、まだ一件の家しかなく、庭の草花と話して過ごします。

 

ある朝、洗濯物を干していると、一枚の大きな白い紙が、

 

風に乗ってふわりと飛んできました。

 

むすめは、家の宝箱から小さなハサミを取り出し、

 

乗ってみたかったヨットや、気球をハサミで切って作りました。

 

初めての船旅は最高でした。

 

でも、こんな美しい景色、体験を話す相手がいません。

 

パーティーを開いたら、誰か来てくれないかしらとむすめは考え、

 

残りの紙をチョキチョキと切って、パーティーに着るドレスを切ったり、

 

オルゴールをならし、パーティーの準備は整っているのに、

 

やはり誰も来ません。

 

悲しくなって、涙が出ました。

 

涙が手のひらの種の上に、涙のしずくが落ちました。

 

娘が窓の下に、その種を落とすと、

 

次の朝、庭に大きな紙の実をつけた木が育っていました。

 

これで、なんでも作れるわと、チョキチョキと切り始めました。

 

犬にネコに、ライオンに、小鳥の親子、メリーゴーランドに。

 

木に残った残り2枚の紙で、小さな家を切って、ことりさんに、

 

向こうの丘に運んでもらいました。

 

すると、向こうの丘の小さな家から、誰かが手を振っています。

 

最後の一枚の紙で、向こうの丘とつなぐ架け橋を切りました。

 

ときどき二人の間にある橋の上で会いましたというお話。

 

真っ白な一枚の紙から、こんな情緒豊かに、美しい情景が

 

生まれるなんて、感動しながら、ページをおくりました。

 

大人にもおすすめしたい美しい絵本です(*^^)v

 

《著者紹介》

文:ナタリー・ベルハッセン

1983年、イスラエルのテルアビア近くの町、クファルサバに生まれる。

大学で生物学と文学を学び、大学院で文学を修める。子どものころから児童文学作家になることを夢みていた。デビュー作である本書では、子どもたちに、ナオミの切り絵芸術を紹介するとともに、夢をかなえる力や自分を実現させていく力、世界を創造する力を誰もがもっているということ、また、愛する人と夢を語り合うことのすばらしさを伝えたかったという。

 

絵:ナオミ・シャピラ

1963年、イスラエル北部のキブツに生まれる。

9歳のころから切り絵技法を学び、以来40年以上この芸術を極めてきた。

グラフィックデザイナーとして活躍する一方、ワークショップや学習障がい児へのセラピーとして切り絵を教えている。『切り絵は、芸術的にも哲学的にも、とても奥深いものです。紙を切るという単純な作業から生まれる素朴な芸術ですが、何を切り抜き、何を残すかという選択を重ねて絵を完成させます。それは、人生と同じようなもの。何を選び取り、何を捨て去るか   失った部分がより鮮明に絵を際立たせるのです。』

と語っている。

※絵本より引用

【文:ナタリー・ベルハッセン 絵:ナオミ・シャペラ 訳:もたいなつう

 出版社:光村教育図書】

 

 


紙のむすめ