ダイナミックな表紙に、『いちご』という短い3文字。
そっと手にとって、ページを開くと、いちごの甘い香りがふわっと漂ってきそう。
いちごが好きで、畑で野菜や果物を作っている祖母に、
『今度はいちごを作ってほしい!』ってお願いしたら、
どんな野菜も、果物も器用に育てる祖母すら、『いちごは難しい。』
と首を縦には振ってはくれなかった。
この絵本はいちごの成長記録のような一冊で、どのようにいちごができるのか
できたいちごをどんな料理で食べるのかまで描かれています。
いちごは秋に苗から植えて、土の中で根がのびてくると、
やがて、根本にあるクラウンと呼ばれる場所から葉がはえてきます。
この王冠の形をしたクラウンから、花や葉が出てくるのです。
この一連のいちごの苗の成長過程が詳細な絵とともに描かれています。
冬になり寒くなると、上に伸びていたはっぱが地面に広がるように、
張り付き、より太陽の光があたるようにします。
土の上にわらをしきつめ、寒さからいちごを守ります。
寒い冬をたえたいちごは、春先に赤い美味しいいちごの実をつけるのです。
ひとつの株から およそ10粒のいちごが収穫されるそうです。
いちごの表面のつぶつぶが、いちごの種なのです。
プチプチと歯ごたえがよく、いちごの美味しさを引き立ててくれます。
その種は大きい実からだと300個の種がとれるそうです。
最後のページにはいちごを使った美味しそうなスィーツがいっぱい登場し、
いちごを育て、収穫し、食べるまでを、堪能したような気持ちになります。
いちご狩りにいって、いちごの葉っぱはみたことありましたが、
花が咲いて、どのように実になっていくかその過程をみたことがなく、
まさか種がひとつに300個もあるとは驚きです。
ぷちぷちとした食感は、種のおかげだったのです。
良く考えると、他の果物や野菜も種は、実の中、真ん中に位置しているものが多く、
実の外側に、たくさんつけているものって珍しいような(*^^)v
色も形も可愛らしく、味も香りも美味しいいちごの不思議が、
ぎっしり詰まった絵本です。
《著者紹介》
作:荒井真紀
1965年東京生まれ。駒沢大学仏教学部禅学科卒業。
1861年16歳の時より、熊田千佳慕氏に師事する。1984年第1回国立科学博物館主催ボタニカルアート展佳作に入選(同展第2回~第4回3年連続入選)。『たんぽぽ』(金の星社)は、2017年度ブラティスラヴァ世界絵本原画展、金のりんご賞を受賞。他の作品に、月刊かがくのとも『あずき』(福音館書店)、『まるいもののなかに』(ポプラ社)、『チューリップ』(小学館)などがある。
※絵本より引用
【作:荒井真紀 出版社:小学館】