黄色いボディーが目を引く、銀座線のぎんちゃん。
地下鉄で働くぎんちゃんは、実はトンネルが大の苦手。
暗くて、ひゅうううと不気味な風の音、狭くて、ひとりぼっちで、
怖くてしかたがありません。
トンネルにはちいさな光が道をつくり、横のかべの染みや、まくらぎのかげが、
今にも動き出しそうで、ぎんちゃんは目をぎゅっとつむりながら走ります。
次の駅に遅れて到着したぎんちゃん。
お客さんを乗せたぎんちゃんはゆっくり動き始めました。
向こうから急に光るライトに驚き、ギリギリですれ違う狭いカーブに
思いっきりブレーキをかけ、
向こうから来る電車のテールランプがかいぶつの目に見えてきます。
とうとう怖くて前に進めなくなったぎんちゃん。
次の駅で、お客さんはみんな降りてしましました。
いよいよひとりになったぎんちゃんは、たまらず目をつぶったまま猛スピードで走り、
気が付くと行き止まりの電車の休憩所にいました。
仲間の地下鉄に、トンネルが怖いことを打ち明けると。。。。
”『目をつぶって、まわりのおとを よーく きいてごらん。』”
とアドバイスをもらいました。
その通りにしてみると、たくさんの電車が走る音が聞こえてきました。
ぎんちゃんはトンネルにいるのは、自分だけじゃないんだと思いました。
他の電車もみんな、トンネルの中を走っているんだと思うと、勇気がわいてきました。
元気を取り戻した、ぎんちゃんはまたトンネルの中を走りはじめました。
大きな駅でお客さんをたくさん乗せると、トンネルの先があかるくなってきました。
もうすぐ終点です。
トンネルを抜けると、そこは、明るい地上です。
ぎんちゃんはライトをぴかっと ひからせて、『しゅぱっつしんこー!』と
また来た道を折り返しましたというお話です。
地下鉄だからってトンネルが得意なわけではない。
海の魚もひょっとしたら、最初から泳ぐの得意だったかわからないし、
泳ぎが苦手な魚もいるかもしれない。そもそも海が苦手な魚だっているかもしれない。
人も同じで、得意なこともあれば苦手なこともある。
でも少しだけ視点を変えてみたら、苦手を克服する糸口になるかもしれません。
ぎんちゃんのように、立ち向かう勇気が湧いてくる絵本です(*^-^*)
【作・絵:鎌田歩 出版社:小学館】