アリさんの行列で『むれ』という字の表紙。
インパクトがある。普通の活字で『むれ』となっていたら、
すぐに意味にたどり着けなかったかもしれません。
アリも集団で生活している生きもののひとつ。昔トリケラトプスなどの恐竜もむれで
動いていたようです。
水族館のイワシも、小さな魚ながら、群れで泳ぐことによって、
ものすごく巨大な魚に見せて、敵から身を守っています。
絵本をひらくと、たくさんの群れ(動物)が現れました。
羊のむれに一匹だけ毛がないひつじ。
さかなのむれの中に、一匹だけほねの魚。
空を飛ぶとりのむれのなかに、一匹だけ走っている鳥。
うちゅうじんのむれの中に、一人だけぴぽぷぽぺって何?どれ?
どういうことと子どもと笑いながら探す。
最初は群れの中から、一匹だけ違うもの(仲間外れ)を探す絵本なのかと思っていたら、
あめのむれに、ひとつぶだけ かくれている
だれかの涙。に思わずぐっとくる。
外から見ると、みんな同じように見えるむれ、
同じ方向を向いているように見えるむれ。
アリのむれの中に、一匹だけ、他のみんなと違う方向へ歩くアリが・・・
一匹だけ集団から外れました。
そこで、出会ったのは・・・・
今度は、みんな違う姿、形、個性をしたアリの集団に出会いましたというお話です。
『むれ』を想像すると、結束、集団行動のような、一見窮屈な印象がありますが、
この絵本は最後のページで集団でありながら、見事なほどの解放感があります。
むれの中で、みんな違ってもいいんだと思わせてくれる側面もあり、
色々な意味で、自由度が高い絵本になっているのがユニーク。
雨に隠れた涙も、時に集団が守ってくれる頼もしさ、優しさを感じます。
子どもは、間違い探しをしているようで、面白いようです。
《著者紹介》
作:ひろたあきら
1989年愛知県生まれ。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。
ライブなどで活躍するほか、絵本を用いたイベントや読み聞かせを積極的に行う。
本書が初めての絵本作品となる。
※絵本より引用