表紙からもわかるように、中のページの絵もとても綺麗で、
それでいて、綺麗なのに温かみも同時に感じられる絵に惹かれました。
くまのベルナルさんにには、家族も友達もいません。
たった一人で生きています。
誰にもかまわれることのない、暮らしは気楽だと思っています。
ベルナルさんの唯一の楽しみは、お気に入りの帽子を被って散歩に出かけること。
ある日、お気に入りの帽子にキツツキが穴をあけ、住みつきました。
ベルナルさんは出て行ってくれ!とキツツキに言いましたが、
キツツキは穴から動かないどころか、他の鳥が飛んでくると、その鳥たちのために、
帽子に新しい穴をあけ、巣をつくってやるのでした。
やってくる鳥は増えるいっぽう。
だんだんベルナルさんの帽子はどんどん長く、高くなっていきました。
始めは途方にくれていたベルナルさんも、次第に鳥たちの美しい歌声を聞くうちに、
楽しい気持ちになっていきました。
ベルナルさんの帽子はすぐに有名になり、みんななんてすばらしいアイデアと、
ベルナルさんのような背の高い帽子をまねする人たちまで。
秋になり、ベルナルさんの帽子はとうとう家の高さを越え、
ベルナルさんはそっと家のそとに帽子を置きました。
毎朝餌をやりに外にでるベルナルさん。
ある朝、帽子の中の鳥たちがみんないなくんっていました。
せっかく友達になれたのに・・・・もう会えないのかな・・・・
また元の静かな暮らしに戻っただけさと、つぶやきながら、
鳥たちがいつ戻ってきてもいいように、えさを毎日用意しました。
”全然心配なんかしてないぞ”と言いながら、窓の外を眺めていました。
日に日に太陽が出ている時間が短くなって、寒くなってきました。
ベルナルさんも冬眠の時期が来ました。
一生懸命起きていようとするものの、まぶたが重くなっていき、
とうとう深い眠りについてしまいました。外は雪がしんしんと降り始めました。
トントントン!
誰かがベルナルさんのおうちをノックしている音で、長い眠りから覚めました。
起き上がって、ドアを開けると、
いつの間にか春がやってきていました。
キツツキが知らせに来てくれたのです。
帽子は根をはやし、大きな木になり、
またたくさんの鳥たちが戻ってきました。
ベルナルさんは、またみんなと再会することができ、とても幸せでしたというお話です。
色とりどりの鳥たち。どんな美しい声で鳴くのだろう?と想いを巡らせながら、
季節も静かに巡り、景色が変わる中で、変わらない関係が続く。
ひとりぼっちだった、ベルナルさんに、たくさんの小さなお友達ができ、
一人の時とは、またひと味ちがう豊かな時間をベルナルさんは知りました。
【作:いまいあやの 出版社:BL出版】