★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

ルリュールおじさん  *いせひでこ

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パリの街の一角、路地裏の小さなお店がルリュールおじさんのお店。

 

ルリュールとは、手作りの製本のこと。パリでも製本の60の工程すべてを手仕事で

 

できる魔法の手を持つ職人ははもうひとけたになったそう。

 

ある朝、植物が大好きな女の子の図鑑が、バラバラになってしまい、

 

大切にしていた図鑑だったので、女の子はとてもがっかりしていた。

 

本屋さんには新しい植物図鑑がいくつもあるけれど、

 

どうしてもこの本を直したいと思っていた。

 

すると町の古本屋さんが、ルリュールおじさんに直してもらえばいいと

 

教えてくれ、女の子はさっそくルリュールおじさんのお店を探し出す。

 

おじいさんは、よくこんなになるまで読んだねと言って、

 

わたしが、なんとかしてあげるよ、と。

 

ルリュールという言葉には、もう一度つなげるという意味もあるんだと話してくれた。

 

女の子はおじさんが製本する側、仕事を見ながら、大好きなアカシアの木の話をする。

 

おじいさんの手は魔法の手みたいに、丁寧な工程で、女の子の図鑑が蘇っていく。

 

表紙もボロボロになっていたので、女の子はアカシアの木のような緑の紙を選んだ。

 

ルリュールおじさんのお父さんもまた、ルリュールだった。

 

次の日、女の子の図鑑の表紙も完成し、女の子はさっそくおじいさんのお店へ。

 

店先には新しく蘇った女の子の図鑑が窓辺にかざってあった。

 

表紙には女の子の大好きなアカシアの木の絵に、

 

金箔で『ARBRES de SOPHIE』ーソフィーの木たちと題に、女の子の名前が刻まれていた。

 

女の子の大切な本は、世界にたった一つの特別な本へ生まれ変わった。

 

本や絵本が好きな人はもちろんのこと、物を大事にする大切さを教えてくれる一冊。

 

大量生産・大量消費で、たくさんの物が出回る世の中で、

 

ひっそりと今もなお、商業目的での、本を売らない、買わないを貫いている職人さんが

 

少なくなってきているものの、存在していることに感動しました。

 

子どもは、本ってこんなふうに作るんだねと、

 

丁寧に本が完成するまでの工程が描かれているので、とても興味深かったよう。

 

これからもこの素晴らしい技術を後世に残していってもらいたいなぁと

 

思わずにはいられません。

 

絵は水彩画で、淡く優しいタッチで、とても美しい絵本です。

 

手元にそっと置いていたい絵本です(*^-^*)

 

《著者紹介》

作:いせひでこ伊勢英子

1949年に生まれ13歳まで北海道で育つ。東京芸術大学卒業。

絵本『むぎわらぼうし』で絵本にっぽん賞、創作童話『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞受賞後、宮沢賢治作品『水仙月の四日』で産経出版文化賞美術賞を受賞。最近では『雲のてんらん会』『1000の風1000のチェロ』『はくちょう』『絵描き』

などの絵本製作と平行して絵本原画展、アクリル画の個展を各地で開催。

チェロを弾くこと、取材の旅、子育て、犬との生活から書かれたエッセイ『グレイのシリーズ』や『ぶう』『空のひきだし』、『カザルスへの旅』『ふたりのゴッホ ゴッホと賢治37年の心の軌跡』共著に『見えないものを見る』などがある。

※絵本より引用

 

【作:いせひでこ 出版社:講談社

 

 


ルリユールおじさん (講談社の創作絵本)