ふるい家の屋根裏部屋に、ちょっと怖がりなおばけが住んでいました。
ずっと一人で、おばけはいました。
屋根裏部屋はとても居心地がよく、部屋の外は怖いので出たことがありませんでした。
おばけは、身体を自由自在に大きくしたり、小さくしたりすることができ、
またガラスのように透き通って透明になることも出来ました。
空中だって飛ぶことができます。
そんなある日、おばけは夜空を見て見たくなって、
屋根裏部屋を出て、空をちょっとだけ飛んでみました。
月は大きくて、星空はとてもきれいで、空気がひんやりして気持ちがいい。
次の日、今まで誰も来なかった屋根裏部屋に、この家に住む小さな女の子がやってきました。
おばけは思わず身体を透明にして隠れました。
女の子は何か探しているようです。
そのまた次の日も、そのまた次の日も女の子はやってきました。
おばけは今まで誰も来なかった、居心地のいい屋根裏部屋という居場所が、
とられてしまうようで、不満気です。
おばけは毎日やってくる女の子を怖がらせて、
もう部屋に来ないようにするにはどうしたらいいか、
あの手、この手を考えました。
透明になって、女の子の肩を叩いてみたり、
紙袋の中に入って、宙を飛んでみたり、
女の子部屋に夜中行って、カーテンを揺らしてみたり、
それでも女の子は全く驚いたり、怖がったりしません。
おばけは最後の手段、全身をあらわに、思いっきり
『おばけだぞ~』と怖がらせてみましたが、
女の子はまったく驚きませんでした。
おばけは観念して、『屋根裏部屋にお願いだから来ないで』と言うと、
女の子は『私の部屋に毎日遊びにきてくれるならいいよ』と答えました。
怖がりなおばけは、それから毎日女の子の部屋に遊びにいきましたというお話です。
おばけなのに、人一倍怖がりなおばけさん。
本当は一人じゃなくて、友達が欲しかったのかも。
女の子もまた、友達を探していたのかもしれません。
可愛らしい二人のやりとり。おばけは、女の子の一言で、屋根裏部屋の外の
世界を知り、また居場所を発見することになりました。
木炭鉛筆で描かれた緻密な絵は、屋根裏部屋の昼と夜の暗がりを、
濃淡で繊細に明るさを表現されています。
おばけと、モノクロの表紙で、少し怖いお話展開なのかと思ってましたが、
ハートフルな、可愛らしいお話でした(*^-^*)
《著者紹介》
作:しおたにまみこ
1987年千葉生まれ。女子美術大学工芸学科陶コース卒業。アニメーションの背景画などを手がける背景美術製作会社でのしごとを経て、絵本製作をはじめる。作品『やねうらべやのおばけ』で第15回ピンポイント絵本コンペ優秀賞受賞。デビュー作『そらからきたこいし』(偕成社)で、第11回MOE絵本屋さん大賞新人賞2位を受賞。
※絵本より引用
【作:しおたにまみこ 出版社:偕成社】