あの『ちいさいおうち』で有名なバージニア・リー・バートンさんの絵本。
バージニア・リー・バートンさんの作品は、
ちょっと時代にの流れに古くなって廃りかけているものを題材に、
新しいものは、便利だし、キレイだし、素敵だけど、
本当の価値はそこじゃないんだよと、語り掛けてくれるようです。
『ちいさなおうち』もしかり、今回のスチームショベルも、
石炭で稼働するショベルで、だんだんとガソリンで動くもの、
電気で動くもの、ディーゼルで動くものが主流になっていく中で、
今まで活躍してきたスチームショベルたちは、仕事を失くし、
居場所をなくし、鉄くずになったり、スクラップにされていきます。
マイク・マリガンは、スチーム・ショベルをいつもきれいに磨いて、
大切に手入れするので、まだまだ十分に活躍できるショベルを、
どうにか仕事が出来ないかと探します。
そんなある日の事、しんぶんにホッパビルという街で、
新しい市役所を建てるという話が出ているのを見つけ、
”『おれたちでその市役所の地下室をほりにいこう』”と出発しました。
二人が長い距離を移動しながら、ようやくホッパビルに着くと、
ちょうどお役人たちが、誰に市役所の地下室をほらせるか話し合っているところでした。
そこで、その地下室の穴をたった1台で、1日で掘ってみせますと宣言します。
もし1日で掘れなければ、お金はいりませんと。
お役人はニヤリと笑みを浮かべ、マイクたちに任せることにしました。
スチームショベルは人が見ていると、気合いが入り、作業がはかどります。
最初小さな男の子が一人、工事を見守っていましたが、それを聞いて男の子は、
街の人や、通りすがりの郵便局員や、配達のトラックにも声をかけ、
みんなが工事を見守っていました。
嬉しくて、ショベルはもっともっと張り切って穴を掘りました。
陽がかげる頃に、丁度綺麗に真四角に穴を掘ることができましたが、
なんとあまりに集中して掘っていたので、ショベルが地上に上がるための
通路を作り忘れていました。
街の人もどうやってショベルを穴から出したらいいのか、みんな意見を出し合いながら
途方にくれていると、小さな男の子が素敵な提案をしました。
ショベルはそのまま地下室に展示して、ボイラーの代わりになってもらい、
マイクは管理人で、その地下室の上に市役所を建てたらどうかと提案し、
街のみんなからは大賛成の歓声が上がりました。
無事市役所は完成し、スチームショベルは地下室で、毎日ボイラーとして、
市役所を暖め働いていますというお話です。
出番がなくなってしまったスチーム・ショベルを大事に世話をし続けたマイク。
最後、穴から出られなくなってしまったハプニングもプラスに変えて、
新たな価値を生み出しました。
物を大切にすること、そして新しい発想で、新たな価値を生むことの素晴らしさを
教えれくれる一冊。
壊れたら捨てる、古くなって飽きたら捨てるのではなく、
本当に必要かなと買うときには、吟味したいし、
壊れたら修理するとか、新しい価値へ変化させるとか、
物を大切にする、工夫する、吟味する、責任を持つという視点に気づかされます。
《著者紹介》
作:バージニア・リー・バートン(1909~1968)
アメリカのマサチューセッツ州・ボストンの近くの町で生まれました。
カルフォルニア美術学校で絵を学びなが、バレエの道を志したこともありました。
美術へ戻ったバートンは1931年、絵の指導を受けていた有名な彫刻家と結婚し、
長男のアーリス、二男のマイケルが生まれてから、絵本の仕事を始めました。
第一作『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』(福音館)は、長男アーリスのために
また第二作の、この『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』は、二男のマイケルのために作ったものです。以後、同じく乗りものを主人公にした絵本に『はたらきもののじょえつしゃ けいてぃー』(福音館)や、『ちいさいケーブルカーのメーベル』(ぺんぎん社)があります。1942年に出版した『ちいさいおうち』(岩波書店)は、完成までに8年を費やしたといわれます。1964年に来日しましたが、1968年に肺ガンで亡くなりました。59歳の生涯でした。世界を代表する絵本作家です。
※絵本より引用
【作・絵:バージニア・リー・バートン 訳:石井桃子 出版:童話館出版】