★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

ちいさなおひっこし   *こみねゆら

f:id:kiko_book:20211122085717j:plain

 

ちいさなおひっこしと聞いて、何を浮かべるだろう?

 

近くへのお引越し(距離感)、小さな家のお引越し、少ない荷物での身軽なお引越し。

 

そんなささやかなお引越しをイメージして、

 

淡いタッチで描かれた絵本を手に取りました。

 

それは私の予想を裏切り、不思議な絵本の世界への入口でした。

 

この黄色いおうちには、家族4人と犬が一匹で、

 

大きな家ではないけれど、普通のおうち。

 

家族は気に入って住んでいました。

 

ある日女の子が、ベッドが小さくなってきたと言い、

 

お兄ちゃんも、椅子にのらないでも、本棚のってっぺんに手が届きそうと話していました。

 

子どもの成長は早いもので、背が伸びたのかもしれません。

 

しかしその話を聞いていた両親もまた、自分たちが身長が伸びたんじゃないかと感じていました。

 

なぜならお父さんはドアの天井で頭を打ったり、お母さんはシンクが低くなったなと

 

感じていたからです。

 

子どもが成長するのはわかりますが、大人になって急激に背がのびるものでしょうか?

 

また、ある日女の子はいよいよベッドに頭がつかえるようになり、

 

男の子はジャンプすれば部屋の天井に手が届くように。

 

お父さんやお母さんも何かおかしいと感じていました。

 

なんだか私たちが大きくなっているのではなくて、

 

まるで、おうちが小さくなっているみたい。

 

周りの家具や、お洋服、食器や家電にいたるまで。

 

ボーンボーンと大きな音がしていた柱時計はポーンポーンと小さくなり、

 

蛇口の水はちょろちょろと細く水が出るだけに。

 

フライパンでは目玉焼きが一度にひとつしか作れず、

 

スープもみんなで5はい、6はいずつおかわりしなくてはなりません。

 

そしてついに、玄関のドアをくぐれなくなったある日、

 

庭に新しい家を建てることにしました。

 

庭はかろうじて小さくなっておらず、元の家が小さくなった分、

 

空き地ができていました。

 

そして新しい大きな家が完成し、一家は住み始めました。

 

とうとう小さくなった家は、これ以上小さくなるのをやめたようです。

 

そして、ある日玄関のしたから小さな手紙がさしいれられました。

 

そこには、小さな文字で、隣に引越してきました、と書いてありました。

 

いったい誰が住んでいるんでしょう?

 

お家がだんだん小さくなっていく、まるで服が小さくなって着れなくなるみたいに。

 

子どもはとても不思議そうに、興味深々で絵本を眺めていました。

 

ちょっと不思議で、奇妙な世界に誘ってくれる一冊です。

 

予想していなかった結末、色鉛筆の優しくやわらかなタッチの絵が、

 

どこか別の異世界へ迷い込んだような、不思議な読了感に包んでくれます。(*^^)v

 

《著者紹介》

熊本県に生まれる。東京芸術大学絵画科、同大学院卒業。フランスに留学して絵本、

人形の仕事を始め、帰国後、フランスと日本の絵本や挿し絵の仕事を手がけている。

絵本に『おばあさんのうちへ』(こどものとも福音館書店)、『トトコのおるすばん』(ハッピーオウル)、『おさんぽ』(江國香織文/白泉社)など。

※絵本より引用

 

【作・絵:こみねゆら 出版社:偕成社

 

 


ちいさなおひっこし