いつもママと一緒にいる子ウサギは、一人でどこか遠くに行ってみたくなりました。
かあさんうさぎに、『ぼくにげちゃうよ』と言いました。
かあさんうさぎは、『ぼうやが逃げるならどこまでもついていきますよ』と言いながら、
子うさぎの背中を追いかけます。
今度は小川の魚になって、泳ぐよと子うさぎが言えば、
お母さんは漁師になって、つりあげますよと。
かあさんが漁師になるなら、僕は母さんより高い山の上の岩になるよと話し、
ぼうやが高い山の上の岩になるなら、おまえがいるところまで、登山家になって
登っていきますよと。
じゃあ僕はことりになって逃げていくよと言えば、
ぼうやがことりになるなら、母さんはとまりに帰ってくるのを木になって待ちますよと。
母さんが木になったら、ぼくは小さなヨットになって逃げるよと言うと、
ぼうやがヨットになるなら、母さんは風になって、私の好きなところへ、ふいて
連れて行ってあげますよと。
じゃあ僕は人間の子どもになって、おうちのなかに逃げちゃうよと言うと、
ぼうやが人間の子どもになって、おうちに逃げ込んだら、わたしはお母さんになって、
その子を抱きしめますよと言いました。
だったら、うちにいても、かあさんのこどもでいるのと おなじだね。
そこで子うさぎは逃げ出すのをやめました。
絵本の中はカラーページとモノクロページの構成が順番に訪れ、印象的です。
愛されているからこそ、帰る場所があるからこそ、時にはそこから離れてみたい、
抜け出したいという子の気持ちと、
母親はきっと子どもがいくつになっても母親なのでしょう、
大きく成長して、自分で考え、自分の意思で、離れていくわが子を、
気づかれないように、そっと影で見守りながら、追いかけていくんだと思います。
親子の微笑ましく、変化する親子関係を、追いかけっこするような物語です。
お母さんの愛情や心配や期待というものが、決して押しつけがましくなくて、
ユーモアがあって、素敵な絵本です(*^-^*)
《著者紹介》
文:マーガレット・ワイズ・ブラウン
数ある児童作家の中で、ブラウンほど幼児期の子どもの関心事や心の動きについて、
知りつくしている人はないといえます。1952年、ブラウンは、若くして亡くなりましたが、その死は多くの人々に悲しみをあたえました。しかし、今や古典的存在となった
彼女の多くの作品は、毎年、何千人もの新しい読者に、喜んで迎えられています。
絵:クレメント・ハード
クレメント・ハードは、自分自身の絵本を創るだけでなく、マーガレット・ワイズ・ブラウンの名作『グッドナイト・ムーン』をはじめ、多くの作家にさし絵をつけています。
※絵本より引用
【作品:ぼくにげちゃうよ 作:マーガレット・ワイズ・ブラウン
絵:クレメント・ハード 訳:岩田みみ 出版社:ほるぷ出版】