雪がめったに降らない地域に住んでいるので、数年に1度降りつもる雪は、
子どもの時からずっと憧れで、特別でした。
朝を起きて、窓の外に広がる雪景色に、どれだけ高揚したことか。
抑えられない気持ちが、寒さを忘れさせ、いつまでも遊んでいたのを思い出します。
初めて雪の上を歩いたときの キュッキュという音。
自分の足跡ができる楽しさ。両足で引きずりながら滑りながら歩いたこと、
線路見たいな足跡ができたこと、友達と一緒に雪だるまを作ったこと。
それが解けてしまうのが悲しくて、冷蔵庫に入れてっと泣きながらお願いしたこと。
降り積もった雪を手ですくって、口に入れて、かき氷みたいに食べたこと。
たくさんのキラキラとした思い出が、鮮明に思い出されます。
ゆきのひに登場するピーターも、降り積もった雪に、
ワクワクしながら、雪だるまをつくったり、雪がつもった山に登って、
滑り降りたり、雪だんごを作って、コートのポケットにそっと入れておうちに持って帰り、
それがいつの間にか、解けて消えがしまった悲しさなど、
ピーターの気持ちに一喜一憂するように
読み聞かせしていました。
ピーターの表情に注目してみてみると、
そんなにピーターの表情が明確に描かれていなくて、驚きました。
こんなにも感情豊かに、物語りに引き込まれるのに、
ピーターの表情は横顔だったり、後ろ姿で見えないものばかり。
自分の遠い記憶が蘇り、作品と重なり一つになった瞬間でした。
読み聞かせしながら、感動している自分がいました。
子どもにもこの絵本のような、
ゆきのひのキラキラした思い出を作ってあげたいなと思いました。
コルデット賞受賞作品です。
《著者紹介》
1916~1983年5月。ニューヨークの下町に生まれ、独学で絵の勉強をする。35歳頃から
子どもの本の挿絵を描き始め、1963年に文・絵ともに自作の絵本『ゆきのひ』でコルデット賞(アメリカの年間最優秀絵本賞)を受賞。以後『ピーターのいす』『ピーターのくちぶえ』等、十数点の絵本を発表し、子どもの心の内面を新鮮な目で捉え、詩情ゆたかに表現した絵本作家として、世界的に高く評価された。
訳:木島 始(きじまはじめ)
1928年京都市に生まれ、東京大学英文科を卒業。詩人・作家・英文学者として幅広く活躍。自作の詩集の他、現代詩のアソソロジー『地球にいきるうた』の編纂、創作に『やせたぶた』『考えろ丹太!』、絵本の翻訳に『はなをくんくん』『ゆきのひ』等。2004年没。
※絵本より引用
【作・絵:エズラ・ジャック・キーツ 訳:木島始 出版社:偕成社】