新米の機関車ごうたは、迷子になってしまい、
もくもくとゆげが立ち上る方角を目印に、進むと、
そこは仲間の機関車ではなく、大きな汽車の銭湯でした。
おそるおそる中に入っていくと、先輩機関車がお出迎えしてくれ、
銭湯の入り方を丁寧に教えてくれます。
銭湯の中はたくさんの線路が張り巡らされており、脱衣所には転車台もあるので、
縦横無尽に移動ができます。
ロッカーに炭水車とスコップを預けると、
次は洗い場で体のよごれをよく洗って流します。
前にあるハンドルを回せば、上からシャワーが。
ブラシでボイラーのすすを払い、キレイに流して、
最後に上にあるつりかわをひっぱると・・・・
線路が持ち上がって、下からもシャワー。これで車輪もピカピカになりました。
さぁ湯舟に入ろう。
おっと線路がゆぶねの途中で切れています。
怖がらないでも大丈夫、そのまま進むと、
車体は湯舟の中でプカプカと浮きました。
湯舟の後ろには、大きな路線図が描かれています。
これをよく記憶して、今度こそ迷わないように。
お風呂上りの楽しみは、よく冷えたオイルミルク!
みんなで乾杯。
機関車が銭湯に行くというありそうでなかった、斬新なお話。
そして今ではなかなか味わえなくなった、裸の付き合い。
先輩機関車との、人情味あふれるお付き合いが、なんとも懐かしいような。
ところどころシャワーのとってが、機関車の運転席のハンドルのようだったり、
つりかわだったりと、牛乳じゃなくて、オイルミルクだったり、
富士山じゃなく、路線図だったり、絵のすみずみまで見て楽しい絵本です。
味わい深い絵のタッチが、どこか懐かしさと、あたたかみを与えてくれます。
ほっこりとすっきりしたような、読了感に包まれます。
【作:尾崎玄一郎、尾崎由紀奈 出版社:福音館書店】