たろうと優しくて、働き者の若者がいましたが、
働いても、働いても、生活は苦しいばかり。ある日観音様にお願いにいくと、
観音様から最初に手にしたものを大切にするようにとお告げがありました。
お堂を出て、歩いていると、階段から転げ落ち、手の中には一本のわらしべが。
観音様の言葉を思い出し、わらしべを握りしめました。
そこに一匹のアブがやってきて、わらしべにたろうはくくりました。
すると赤ちゃんがそのわらしべを欲しがり、
たろうは赤ちゃんにあげました。
するとお母さんがみかんをみっつくれました。
その後もたろうはご縁のままに、出会う先々で、困った人に持っているものを全て渡すと、
またお礼に何かをもらい、たろうの優しさが、いろんな人やモノや、
なぜか立派なものになっていきました。
最後は立派なお屋敷のお婿さんになり、綺麗なお嬢さんと結婚し、
仕事も立派なお屋敷に住むことに。
一本のわらしべから、人生が始まりました。
このお話の好きなところは、モノから、最後大切な人に変化していったことです。
観音様に最初にもらったものを大切にしなさいと言われたたろう。
大切にすることは、自分がただそれを持ち続けることではなく、
大切に、必要とする人に渡す、手放しているけど、大切にするとはどういうことかを、
教えてくれます。
どんなに貧乏でも、たろうは自分の持っているもの(優しさ)を相手に全て与え、
そして結果、大きなもの幸せを得ました。
一見がらくたのような、不要なものに見えるものでも、誰かにとっては宝物になる、
そこも読んでいて楽しめました。
たろうはそのあとも、真面目な性格は変わらず、たくさん富を得たあとも、
真面目に働いたそうです。
《著者紹介》
文・絵:いもとようこ
兵庫県生まれ。金沢美術工芸大学油画科卒業。『ねこのえほん』『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞。『いもとようこ うたの絵本1』で同グラフィック賞受賞。2015年パリとボローニャで絵本原画展を開催。
〈おもな作品〉
●赤ちゃん絵本●『おふろ』『いろ』『おかあさんといっしょ!おとうさんといっしょ!』『かずのえほん』『うんち』『あいさつ』●創作絵本●『おやすみなさい』『ごめんなさい!』『まいにちがプレゼント』『心ってどこにあるのでしょう?』『けしごむくん』『ありがとさん』『たったひとりのともだち』『おばあちゃんもこどもです』●知育絵本●『ABCのえほん』『あいうえおのえほん』●名作・昔話●『サンタクロースっているの?ほんとうのことをおしえてください』『大人になっても忘れたくないいもとようこ世界の名作絵本』シリーズ・『いもとようこの日本むかしばなし』シリーズ(以上金の星社)その他『できるかな?かぞえてみよう1・2・3』(講談社)『くっくのおてつだい』(ひかりのくに)等多数。
※絵本より引用