カンガルーの子は、ママに洋服が上手く着れなくて助けて欲しいとき、
パパに上手に出来た積み木を見せたいとき、
一緒に遊んで欲しいとき、
先生に、自分の描いた花の絵の上に、ちょうちょが止まって見て欲しいとき、
『ねぇみてみて!』と声をかけると、『ちょっとまってて!』と言われる。
カンガルーの親子の日常は、そのまま私たちの日常だ。
子どもがみてみて!と話しかけてくるとき、毎回応えられるわけではない。
『ちょっとまって!』と何度言ってしまったことだろう。
物語の中盤では、旅行に出かけたカンガルーの親子。
夜明けに目を覚ましたカンガルーの子が、家族みんなを起こしてみるも、
『もうちょっと、ねてる』と言われ、
カンガルーの子はひとりで美しい日の出をみます。
”よのなかには、いちばんいいとこ、みのがすひとも、いるのね”
この一言にはドキリ。
子どもの一瞬一瞬の笑顔だったり、成長だったり、子どもの見ている世界をみたり、
共有する機会を失ってきたのかもしれないと思いました。
大人が思っている以上に、子どもの『みてみて!』という時間は短いのかもしれない。
物語の後半では、今度はカンガルーの子がはやくしなさいと急かす大人に、
『ちょっとまって!』という番。
ここも思わず読んでいて反省してしまう。
子どもが夢中になっていることを、大人の都合や時間の都合で、
途中で終わらせてしまってはいないか?
なんて大人は勝手な生きものなのだろうと我にかえりました。
一番最後のページは『もうちょっと!』という気持ちを家族全員ぴったり合う時を
カンガルーの子が発見します。それは美味しそうなホールケーキを取り分ける時。
ユーモアたっぷりの最後に、ようやくホッと心をなでおろしました笑
子どもも大人も一緒に共感できる素敵なお話です。
【文:アニタ・ハーパー 絵:スーザン・ヘラルド 訳:小川仁央 出版:評論社】