絵本としては珍しいかもしれない恋の物語です(*^-^*)
大人向けの絵本というわけではなく、子どもに読み聞かせしていると、
横で子どもが泣き出しました。
ちゃんと子供にイタチの気持ちが伝わっていたことに驚きました。
絵本を読んでいて泣かれたのはこれが初めてです(*^^)v
イタチのコックさんは、両親もいなくて、たったひとりで生きてきました。
誰かが来てくれるといいなぁと始めたレストラン。
いたちは自分の牙が嫌いで、お客さんを怖がらせてしまうのではと思い、
背中を向けて、おいしい食事をひたすら作り続けていました。
そんなある日、谷の向こう側から、うさぎのお嬢様がレストランに訪れ、
いたちのコックが作る料理のあまりの美味しさに感動していました。
しかしコックさんに話しかけても顔を向けてくれません。
イタチも、心優しいうさぎのお嬢さんの事がその日から忘れられませんでした。
またしばらくして、うさぎのお嬢さんが結婚相手を連れてレストランに訪れました。
いたちのコックさんはショックでした。悲しい気持ちでいっぱいになりました。
そんなコックさんの姿をうさぎのお嬢さんもずっと見つめていました。
2人がお店が出ようとしたとき、急に空からワシが2人に襲い掛かろうとしていました。
いたちは大切な人を守るため、2人に『にげろ!』といい、牙を使って戦い、
見事ワシを追い払いましたが、自分も大きな傷を負いました。
やがて山の雪がとける春頃、うさぎのお嬢さんがレストランを訪れました。
うさぎお嬢さんは、いたちのコックさんと一緒に生きていきたいと告げました。
ずっと一人で生きてきた、いたちのコックさんは、初めて涙を流しました。
それから2人でレストランに立ち、お店はますます繁盛しましたというお話です。
大切な人を大切にする気持ち、誰かを失う悲しさ、寂しさ。
一緒に誰かと寄り添って生きていく幸せが描かれています。
いたちはずっと黒い体と、するどい牙を持っている自分が嫌いでしたが、
その牙で大切な人を守る事ができたこと。
そしてありのままの自分を好きになってくれる人に出会えたことで、
自分を受け入れること(許すこと)ができました。
子どもがこれを恋と認識したかはわかりませんが、悲しい気持ち、
うれしくて涙がでる気持ちに、共感できたようです(*^-^*)
《著者紹介》
作:島本理生(しまもとりお)
1983年東京都出身。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。
2003年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。2015年『Red』で
第21回島清恋愛文学賞を受賞。2018年『ファーストラブ』で第159回直木賞受賞。
『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』
『あなたの愛人の名前は』など著書多数。
絵:平岡瞳(ひらおかひとみ)
1981年愛知県出身。愛知県芸術大学美術学部デザイン専攻卒業。イラストレーター。
版画や色鉛筆の技法を使い、書籍や雑誌、絵本などの媒体で活動。絵本の仕事に『たのしいピクニック』『まいごのてがみ』(いずれも作・工藤直子)、作品集に『星屑珈琲+青い散歩道』や『ゆき』など。東京都在住。
編:瀧井朝世(たきいあさよ)
1970年東京都出身。慶応義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経てライターに。WEB本の雑誌「作家の読書道」、『きらら』『週刊新潮』『anan』『クロワッサン』などで作家インタビュー、書評などを担当。TBS系『王様のブランチ』ブックコーナーのブレーンを務める。著書に『偏愛読書トライアングル』『あの人とあの本の話』。
※絵本より引用
【作:島本理生 絵:平岡瞳 編:瀧井朝世 出版社:岩崎書店】