森に住む踊りが大好きな妖精さんが、ある日森の奥で、
オレンジ色をした、大きなたまごを見つけます。
どんな動物のたまごなんだろう?
誰も見たことがありません。
妖精は、これはきっと太陽が産み落としたたまごなのだと思いました。
太陽の赤ちゃんが生まれたら、この森だけの太陽になるのだと心躍りました。
すると、冬の間は南の島で過ごすズアオアトリが、これは太陽のたまごなんかじゃないよ。
これは、オレンジという実なのだと教えてくれました。
甘いジュースがたくさん入っているよと。
さっそく草の茎をストローにして、森のみんなで吸ってみると、
甘くて、香りのいい、ジュースに、みんな目を丸くしました。
すると突然カラスが飛んできて、オレンジを奪っていきました。
妖精は悲しくなって、泣き出しました。
たった一つのオレンジの実がなくなってしまったのですから。
その様子を見ていたツグミが、秋になったら暖かい場所に行くんだけど、
君を背中にのせて飛んで行ってあげるよと言い、妖精は大喜び。
森には長い冬の季節がやってきました。
おひさまの国には、おひさまのたまご!?オレンジの実がたわわになっていて、
色んなオレンジの実を味わいました。
このお話は夏のある日、森へ遊びに来た男の子のかばんから落ちた、
オレンジの実から始まったお話なのでした。
北欧生まれの絵本だからか、太陽を喜び、特別な存在として描かれています。
日照時間が少なく、冬の季節の長い北欧では、太陽の季節は、
とても貴重で、まるでご褒美のような時間なのでしょう。
おひさまのたまごという発想がとても新鮮です。
太陽は宇宙にたった一つの存在という常識を、想像で飛び越え、
楽しい絵本ならではの世界が広がります。
《著者紹介》
作・絵:エルサ・ベスコフ
1874年~1953年。スウェーデン生まれの児童文学作家・絵本作家。六人の子どもを育てながら、数多くの物語・絵本を残した。その作品は、北欧だけでなく世界中で、何世代にもわたって愛されている。主な作品に「ベレのあたらしいふく」「おりこうなアニカ」(福音館書店)「どんぐりぼうやのぼうけん」(童話館出版)「しりたがりやのちいさな魚のお話」(徳間書店)
訳:石井登志子
1944年生まれ。同志社大学卒業。スウェーデンのルンド大学でスウェーデン語を学ぶ。
訳書に「川のほとりのおもしろ荘」(岩波書店)「筋ジストロフィーとたたかうステファン」「いたずらアントンシリーズ」(偕成社)「おりこうなアニカ」(福音館書店)
「こんにちは、長いくつ下のヒッピ」「ブリットーマリはただいま幸せ」「おひさまがおかのこどもたち」「歌う木にさそわれて」「夕あかりの国」「よろこびの木」(徳間書店)など多数。
※絵本より引用
【作・絵:エルサ・ベスコフ 訳:石井登志子 出版社:徳間書店】