まだ時計のなかった時代に、時は2時間置きにカウントされ、お寺の鐘で、
時間を知らせていました。
真夜中の12時は、九つ。2時は八つ。という具合に。
この昔の時間の刻み方が分からないと、子どものには絵本でもお話が難しいかな?
と思っていましたが、しっかり最初のページに現在の時計とともに、
昔の時の刻み方があらかじめ説明されています。
ある男が夜中の12時に屋台のそばを食べに行きました。
とても美味しいお蕎麦で男は大満足。蕎麦屋をおだてるだけおだて、
さてお会計となったときに、わざと細かいお金を出して、
一つ、二つ、三つ・・・・八つ・・・
いまなん時だい?とたずね、お店の人が九つ(12時)ですというと、
一文ごまかし、十から数え始めます。
それを側でこっそり見ていたもうひとりの男は、えらく関心した様子で、
自分も次の日に試してみることに。
さっそく次の日男は屋台の蕎麦屋を見つけると、
昨夜の蕎麦屋とは違うお店だったようで、そばもまずいし、どんぶりは欠けているし、
お世辞にも美味しい蕎麦とは言えませんでしたが、男は蕎麦屋をおだてました。
そして、お会計となったとき、八つまで同じように数え、
いまなん時だい?と伝えると、四つ(10時)と。
子どもは”いまなん時だい?”というフレーズがとても気に入ったようでした。
話の内容は理解できたか分かりませんが、違う時間に食べにいってしまったから、
だますつもりが、自分から多く支払ってしまうことになったんだよと
説明しながらゆっくりと読み聞かせしました。
本当の落語だとテンポももっと速かったり、絵本よりも情景が想像しにくいので、
絵本で落語を読むことで、より話の内容や、面白さが子どもにも伝わるように思います。
夜の22時、夜中の0時で、作品はずっと夜を描いているので、
その微妙な時間の違いが、絵でよく表現されているなと感じました。
《著者紹介》
作・絵:川端誠(かわばたまこと)
1952年生まれ。シリーズごとにテーマや表現技法をかえて、多様な世界を展開している。『鳥の島』『森の木』『ぴかぴかぷつん』『お化けシリーズ』(BL出版)など著作多数。絵本作家ならではの的を射た絵本解説も好評。
落語絵本に『ばけものつかい』『まんじゅうこわい』『はつてんじん』『じゅげむ』
『おにのめん』『めぐろのさんま』『たのきゅう』『いちがんこく』『そばせい』
『たがや』『おおおかさばき』(いずれもクレヨンハウス)。川端流落語絵本をライフワークにしている。本作は第12作目。
※絵本より引用
【作・絵:川端誠 出版社:クレヨンハウス】