★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

大きな木のような人

パリの植物園の研究員であるわたしと、日本から来ている少女との

 

木をめぐる交流のお話。

 

木は何も語らないし、どこかへ行ってしまうこともない。

 

いつもただそこにいて、私たちを優しくそっと包んでくれる存在。

 

少女はたったひとりで、今日も木と向き合う。夏の青々とした木の姿を

 

いくつもスケッチに残し、花壇の色鮮やかな花も描く。

 

植物園の立ち入り禁止の場所にさえ、植物がより近くに感じられる場所まで、

 

少女は足を踏み入れてしまう。

 

そんなある日、植物園の花を少女はひきぬいた。

 

おじいちゃんにプレゼントしたかったらという理由で・・・

 

研究員のおじさんは少女にひまわりの種を渡す。

 

そしておじさんは少女と一緒に400歳のアカシアの木や、3300万年前の木の化石を見たり、

 

たくさんの木を見て、絵を描き、語りかける。

 

少女はひまわりを育てながら、植物園の木と対話するうちに、

 

少しずつ少女の心の芽が育っていく。

 

それから雨の日も、暑い夏の日も、毎日植物園に通い詰めた。

 

世界中の木が集まる場所で。

 

”人はみな心の中に、一本の木を持っている”

 

もうすぐ夏が終わるころ、少女は日本に帰らなくてはならなくなった。

 

研究員のおじさんからもらったひまわりの種は大きな黄色い花を咲かせた。

 

少女の心にもしっかりと根をおろした。

 

そして少女は木の下に、この夏に描き上げた数々の木や植物の絵を、

 

『ありがとう』の言葉と一緒に置いていきました。

 

研究員のおじさんは冬になる頃、寒々しい風景の広がる植物園に少女が残していった、

 

色鮮やかな夏の木や植物の絵を、園内中に飾りました。

 

どことなく影のある少女、心を閉じていた少女が、木や植物を通して、

 

研究員のおじさんとの交流をとおして、少しずつ心を開いていく。

 

木や植物は、何かを求めるわけでもなく、ただただ等しく私たちに与えてくれる存在。

 

またこの絵本は、『ルリユールおじさん』の主人公の女の子ソフィーも

 

研究員として登場していて、ソフィーも長年の夢を叶えたんだなと

 

読んでいて微笑ましく、嬉しくなりました。

 

大人がじっくり読みたい一冊です。

 

《著者紹介》

作:いせ ひでこ

画家、絵本作家。1949年生まれ。13歳まで北海道で育つ。東京芸術大学卒業。

『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞、『水仙月の四日』で産経児童出版文化賞美術賞、『ルリュールおじさん』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞する。

宮沢賢治ゴッホの研究をライフワークとしており、スケッチの旅での出会いや実感を大切にする現場主義に徹した作品が多い。エッセイに『ふたりのゴッホ』、絵本に

よだかの星』『にいさん』『絵描き』『雲のてんらん会』など多数がある。

2007年にはパリで「いせひでこ絵本原画展 絆」を開き、好評を博した。その出会いをきっかけにして東京で開催された2008年の「日仏絵本文化交流原画展 絆」をはじめ、各地での絵本原画やタブロー作品展示を通した絵本の普及にも力を注いでいる。

本書『大きな木のような人』は、仏語版もフランスで同時刊行となる。

 

※絵本より引用

【作:いせひでこ 出版社:講談社

 

 


大きな木のような人 (講談社の創作絵本)