5人兄弟の3番目に生まれたアンドルーは、発明、ものづくりが大好き。
他の兄弟がオシャレに夢中だったり、遊びに夢中な中、アンドルーはひとり、
もくもくとモノづくりに忙しい。
キッチンの上にヘリコプターを作ったり、おねぇさんの大事なミシンを使って、
メリーゴーランドを作ったり、リビングにワシの檻を作ったり、こども部屋に
ロープウェイを作ったり、それはそれは大きな作品を作っては、
家族に迷惑顔をされる毎日。
アンドルーは誰にも邪魔されない場所で、もっと大きな秘密基地を作ろうと、
道具一式を持って家を飛び出した。
それを見ていたのは庭にいる犬のサムだけ。
アンドルーは歩いた。牧場を抜けて、丘を越え、沼を渡り、森へ進む。
やがて大きな原っぱに出た。まずもみの木の下に秘密基地を建てた。
でも、ひとりでいられたのも、ほんの短い時間だった。
しばらくするとアリス・バードッグが、鳥小屋を作って欲しいと。
木の上にアリスと鳥の秘密基地を作った。秘密基地にははしごで登るのだ。
あちらこちらに鳥のエサ台や、水浴び場、巣箱があり、
360°ぐるっと森を見渡せるバルコニーまでついている。
次に森にやってきたのは、ジョージ・ターナー。
ボートの模型と釣り竿をもってやってきた。お風呂で自由に遊べないから、
僕の秘密基地を作ってと頼まれた。
小川に橋をかけて、橋の上がジョージの秘密基地。
船着き場も作って、ボートの模型を浮かべる。水車で動く自動うちわも発明。
それからも続々とこどもたちはやってきて、アンドルーに思い思いの自分だけの
秘密基地をつくってもらう。
思いっきり楽器を演奏できる基地や、誰にも邪魔をされずにドレスを着られるお城や、
原っぱはすっかり、小さな村のようになった。
そのころ、アンドルーが住んでいた村では、こどもたちがいなくなったと
大騒ぎになり、大人はまる4日間必死で子どもたちを探し続けました。
犬のサムだけがみんなの行方を知っていました。
サムもとうとう寂しくなって、悲しそうに声を上げました。
サムは大人たちを子どもたちがいる森へ案内し、
やがて原っぱにいる子どもたちを発見しました。
アンドルーは家に戻ると、地下室がアンドルーの秘密基地になり、そこで思う存分
発明をしましたというお話。
子どもの時アンドルーのような立派な秘密基地ではないけれど、
いくつも友達と一緒に秘密基地をつくり、自分の宝物を隠したりして、
次の日にもまだその宝物があるか、ワクワクして眠れなかった懐かしい思い出が
蘇ります。子どもの頃の想像力、時には大人にとっていたずらに思えるかもしれませんが、
そっと見守って、才能をのばすことはできなくて、壊してしまわないようにしたいなと
絵本を読んでいて思いました。モノクロの線で描かれており、
子どもはワクワクした気持ちで繰り返し読んでいました。
《著者紹介》
文・絵:ドリス・バーン(1923‐2011)
作家、イラストレーター。オレゴン州、ポートランド生まれ。オレゴン大学、ハワイ大学、ワシントン大学で学び、結婚後はワシントン州の北西、サンフアン諸島のなかのウォルドロン島に移り住んで、4人の子どもを育てた。当時のウォルドロン島には電気や水道がなく、絵を描くのも一日の薪割りを終えたあと、井戸からバケツで水を汲んで絵筆を洗っていたという。その後ニューヨークの出版社へイラストレーションの持ち込みをはじめ、最初の作品である本作で、1965年にワシントン州知事芸術賞を受賞。
訳:千葉茂樹(ちばしげき)
1959年、北海道生まれ。出版社勤務を経て、現在は翻訳家。絵本から読みもの、ノンフィクションまで幅広い作品を手がける。『ちいさな労働者』(あすなろ書房)、『ゴハおじさんのゆかいなお話』(徳間書店)で産経児童出版文化賞受賞。『ながいながいよる』『マルセロ・イン・ザ・リアルワールド』(以上、岩波書店)、『あたまにつまった石ころが』(光村教育図書)など、訳書多数。
※絵本より引用