木炭画のモノトーンの世界の中に、赤色と黄色のさし色がとても印象を残す絵本。
ある雪の日、おばあちゃんの家にケーキをひとりで届けに行くことになった女の子。
雪の上にある父の足跡を追って歩きますが、途中でこけてしまいケーキの箱がつぶれて
しまいます。女の子は涙が出そうになりながら、足跡をたどっていくと、
そこには見たこともない大きな家にたどり着きました。
父の姿が見え、家の中に入っていくと、そこにはおめかしをした森の動物たちがいました。
どうやらお茶会のようです。ようこそと招き入れられた女の子は、
最初は緊張していましたが、森の動物たちが演奏する素敵な音楽と、
美味しいケーキやお茶を飲みながらお話をします。
おばあちゃんにケーキを届けることを思い出し、ケーキがつぶれてしまった話をすると、
森の仲間たちは、みんな持ち寄った色とりどりの、
形もそれぞれの美味しそうなケーキを分けてくれました。
すっかり元気を取り持出した女の子は、動物たちと一緒におばあちゃんの家に歩き出し
無事たどり着きました。後ろを振り返ると、さっきまで一緒だった森の仲間たちの
姿は見えなくなっていました。
道に迷ってしまったときの心もとなさ。ふと迷い込んでしまった楽しい世界。
子どもの時だから起きた素敵な奇跡。
夢のようだけど、夢ではなかったことをケーキが証明してくれています。
女の子と女の子が体験した時間だけが色をのせられて表現されているので、
もりの仲間たちや、おばあちゃんの家でのことがまるで夢であったかのような、
まるで女の子の魅せる、空想の世界を行き来しているような感覚です。
読者はこの不思議な世界へと、迷い込みます。
《著者紹介》
作:みやこし あきこ(宮越暁子)
1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。在学中、「ニッサン童話と絵本のグランプリ」で優秀賞を受賞。卒業後は、木炭画やコラージュ、アニメーションなど様々な技法を用いて作品を作りつづけ、個展やグループ展などで発表。現在フリーのイラストレーターとして活動している。2009年には初の絵本『たいふうがくる』(BL出版)を出版。東京都在住。
※絵本より引用
【作:みやこしあきこ 出版社:偕成社】