小学校の教科書で読んで以来、いいお話だったという記憶があり、
子どもにも読ませたくて、懐かしい気持ちで手に取りました。
山奥で暮らしているおじいさんとおばあさん。
家には田んぼも畑もありません。毎日あまがさを編んで、村の人たちに売って、
どうにか暮らしていました。
大晦日の日、明日はお正月というのに、おもちを買うお金もありませんでした。
おじいさんは町へあみがさを売りにいくことにしました。
家で帰りを待つおばあさんに、お正月のおもちや、ごちそうを買って帰ろうと
おじいさんは出かけました。
峠の道にお地蔵様が、6つ並んでいます。
どうか町でかさが売れて、お正月のごちそうを買って帰れますようにと手を合わせました。
町へついておじいさんは大きなをはりあげますが、大晦日とあって、
みんな忙しそうで、足を止める者はいませんでした。
そのうちに日が暮れて、雪が降り始め、おじいさんは諦めて山奥の家へ、
とぼとぼと帰っていきました。
帰り道、また地蔵様の前にくると、地蔵様の上に雪が積もっていました。
おじいさんは、一つ一つ雪を払い、持っていたあみがさを5つ地蔵様の頭に
かぶせました。最後の一つの地蔵様には自分の被っていたあみがさをかぶせ、
おじいさんは家に帰りました。
おばあさんに今日1日のことを話すと、
”「それは良いことをしなすった。なんにもなくても、ふたりで お正月をいわって、
めでたい 気持ちになればいいんです」”
その夜ふたりが眠りにつくと、急に家の外で大きな音がしました。
そっと外に出てみると、俵がいくつも転がっていて、雪の中をあみがさをかぶった
6つのお地蔵さまが山の方へ戻っていくのが見えました。
中をあけてみると、お正月のかざりや、おもち、さかな、やさいや、おさけもあります。
心優しいおじいさんとおばあさんは、お地蔵様からもらったたくさんの贈り物で、
お正月を楽しく、お祝いすることができましたというお話。
自分の日々の暮らしに余裕がなくなると、感謝する気持ちだったり、
優しい気持ちだったりが持てなくなってしまうことがあります。
おじいさんは31日まで一生懸命働き、おばあさんのことを思って、
町に出て、何も売れなかったおじいさんを、おばあさんもまた温かく感謝して迎え、
おじいさんのしたことを咎めるどころか、尊敬の念をもって、
おじいさんの優しい気持ちに寄り添っています。
モノにあふれている現代、忙しさに忙殺されてしまって、
心は本当に裕福だろうか?と考えさせれる一冊です。
これからもずっと読み継がれていって欲しい絵本です(*^-^*)
《著者紹介》
文:谷真介
1935年、東京生まれ。日本文芸家協会会員。『台風の島に生きる』(偕成社)で第三回ジュニア・ノンフィクション文学賞、’76年度厚生賞児童文化福祉奨励賞を受賞。主な作品に、『ふえふきとうげ』(金の星社)『ピン・ポン・パンがやってきた』『沖縄少年漂流記』(理論社)『十二さま』(国土社)『沖縄のむかし話』『鳥の島漂流記』(講談社)「行事むかしむかし」シリーズ(以上、佼成出版社)など多数ある。
絵:赤坂三好
1937年、東京生まれ。銅版画の制作のかたわら、本の装丁、さし絵、絵本等に幅広く活躍。’73年『かまくら』(講談社)’75年『十二さま』(国土社)でチェコBIB世界絵本原画展・金牌賞、’73年『十二さま』で小学館絵画賞を受賞。実兄、谷真介氏とのコンビが多く、作品に『雪の絵本シリーズ・全三冊』(国土社)『ふえふきとうげ』『弁慶』(金の星社)「行事むかしむかし」シリーズ「十二支むかしむかし」シリーズ(以上、佼成出版社)など多数ある。2006年逝去。
※絵本より引用
【文:谷真介 絵:赤坂三好 出版社:佼成出版社】