生活は貧しいけど、一生懸命働く家族がいました。
朝早くから農作業をして、夜は縫物や機織りをしながら、朝から晩まで若い夫婦は
子どもを育てながら働き、毎日とても幸せでした。
ある日屋根裏から降りてきた貧乏神様は、100年以上この家で暮らしていましたが、
夫婦がとても真面目に働くので、ここにはもう居られないと出ていこうとしました。
すると夫婦は引き止め、ごちそうを振る舞い、貧乏神さんを大切にしました。
そこへ福の神がやってきて、ここはお前のいるところじゃないと!と言い、
貧乏神の腕を掴むと、家から追い出そうと力づくでひっぱります。
貧乏神様も福の神が怖くてガタガタ震えながらも、喧嘩を始めました。
すると夫婦も貧乏神様に肩入れして、応戦。
福の神はえんめいのこづちを落として、逃げていってしまいました。
えんめいのこづちを手にした貧乏神様は、そのこづちで、米俵を出し、
美味しい食べ物や、子ども達へおもちゃ、小判など、いろんなものを出しました。
貧乏神様がまるで福の神になったみたいに。それからも貧乏神様と家族は
仲良く暮らしましたというお話。
貧乏神と聞くと、はやく家から追い出してしまいたい、運気が下がりそうで、
決して歓迎される神様ではないイメージですが、この若夫婦は100年も昔から
いてくれた神様を大事に大事にしました。
福の神も、貧乏神もどちらも神様に変わりはなく、
人を見た目や肩書では判断せず、みんなを同じように大切にしなさいという
メッセージを感じます。
なんとも頼りなくて、ほっとけない、優しい神様でした。
福の神はこづちを失くしてしまい、その後どうなったのでしょう?
どこかのお家で大切にされているといいねと言いながら読み聞かせしました。
もし、貧乏神を追い出し、福の神を迎えていたら、家族はどうなっていたでしょうか?
結果は変わらなかったのか、それとも心から幸福な気持ちになれたのでしょうか?
子どもに質問しながら、また違ったお話の結末を考えるのも楽しい絵本時間です♪
《著者紹介》
作:大川悦生
1930年長野県に生まれる。早稲田大学文学部卒業。現在、民話を語る会主催。著書に「現代に生きる民話」(NHKブックス)他。絵本に「へっこきあねさがよめにきて」(ポプラ社)他多数。
絵:長谷川知子
1947年北海道に生まれる。武蔵野美術短期大学商業デザイン科卒業。現在、フリーのイラストレーターとして活躍中。絵本に「いたずらっこいっちゃった」(ポプラ社)他多数。
※絵本より引用
びんぼうがみとふくのかみ (子どもがはじめてであう民話 9)