いじめられていた亀を助け、助けた亀の背中に乗って、竜宮城へいき、
ごちそうと、美しい乙姫の舞と、お酒と、見たこともないような美しい竜宮の景色の
中で3日間過ごしたうらしまたろうは、すっかり今までの苦しい暮らしや、
日常を忘れ、非日常の世界に、身をゆだね、楽しみます。
3日も経つ頃、うらしまたろうは自ら、元の場所へ帰りたいと乙姫に告げ、
乙姫からおみやげに玉手箱をもらいます。
かつて暮らしていた村に戻ってみると、なんと3日どころか300年の月日が経っており、
誰一人うらしまたろうのことを知っているものはいませんでした。
開けてはいけませんと言われていた玉手箱を開けると、
たちまち老人になってしまったというお話。
子どもの時には、楽しくて、不思議で、最後がちょっと衝撃的な印象を残す物語でしたが、
大人になって読みかえしてみると、奥深さを感じる作品です。
昔から限りある時間を生きる者として、不老不死への憧れ、欲だったり、
老けや、衰えることへの不安を人間はずっと抱いていたのだなと。
これは時代が進んでも変わらない願い・悩みなのかもしれません。
また、竜宮城へ行ったときには、日常の苦労や、生活から逃避し、
経験したこともない贅沢三昧を3日ばかり堪能しますが、
たった3日で遊んで、贅沢する暮らしに飽き、竜宮城を離れる決断にでます。
苦しくてもコツコツと自分の手で得た幸せ、喜びこそが、
本来人間のあるべき姿とうらしまたろうは考えたのかもしれません。
与えられる幸せではなく、本当に満ち足りた人生とは、
自分で選んで、努力して、手に入れた幸せなのだと言わんばかりに。
そして戻ってみると300年の時がたっており、最後は一瞬にして老人となってしまう。
大切な人生の時を、一瞬にして失ってしまったたろう。
あのまま玉手箱を開けなくても、老人にはならないけど、
そのまま誰も知らない村で生きていくか、竜宮城に戻るかしかなく、
元の幸せな生活は戻って来ないまま。
うらしまたろうは、本当の幸せとは何か?
何の変哲もない毎日の尊さを教えてくれる絵本です(*^-^*)
【文:おおかわえっせい 絵:むらかみこういち 出版社:ポプラ社】