日本中で語りつがれている昔話。いくつかのお話のバージョンがあるようです。
いろんな作品を読み比べてみるのも面白いかもしれません。
茶釜に化けたタヌキは、お寺で千人のお茶会で、窯のお湯をついでは、
どんどん湧き水のようにお湯が沸きあがり、それはまろやかで美味しいお茶だと
評判になりました。和尚さんもこの茶釜をえらく気に入っていましたが、
あるひ和尚さんが一服しようと戻ってくると、なんと茶釜からしっぽがはえ、
足がはえ、手が出て、タヌキが躍っていました。
これは化け物だと和尚さんは声を上げると、お坊さんたちが次々に集まります。
その瞬間茶釜はまた元のとおりに。
和尚さんは気味が悪くなり、その茶釜を道具屋さんに売ってしまいました。
道具屋さんも、こんな立派な茶釜はなかなかないとえらく気に入りました。
その晩、なにやら音がするので、様子を見に行くと、
また茶釜からしっぽがはえ、手足がのび、タヌキが躍っていたのです。
道具屋も化け物だと恐ろしくなり、知り合いの道具屋に売り、
次々に街中の道具屋をまわり、その茶釜のうわさを知らないものはいないほどになりました。
街中の道具屋たちはどうしたもんかと相談し、
そうだ見世物小屋を作って、茶釜たぬきに踊ってもらうことに決めました。
するとその茶釜を見に来たお客さんは、大変に喜び、大盛況となりました。
稼いだ大銭を道具屋みんなで分け合い、福を分け合ったということで、
ぶんぶくちゃがまと呼ばれるようになりましたというお話。
いろんなお話があるようですが、こちらの絵本は一貫して、
最初から最後まで、みんなが幸せになる、福をもたらす、茶釜のお話です。
なぜタヌキが茶釜になったのか、その部分のストーリはありませんが、
子どもは江戸の街並みや、茶釜がたぬきになったり、引っ込んだり、
踊ったりするのが愉快なようです。
最後はまた最初のお寺に戻って、床の間にお寺の大切な宝として、
飾られていて、みんなに愛される茶釜というストーリです。
とても明るいストーリなので、それが長く親しまれてきた所以なのだと思います(*^-^*)
《著者紹介》
文:香山美子(こうやまよしこ)
1928年東京生まれ。日本児童文学者協会・日本文芸家協会・日本童謡協会会員。作品に「あり子の記」(日本児童文学者協会賞)、絵本「どうぞのいす」「おつきさまのとおるみち」「まちのパンやさん」「なーんのはながひーらいた?」「クマのおじさんのもり」詩に「おはなしゆびさん」「いとまきのうた」など多数ある。
絵:篠崎三朗(しのざきみつお)
1937年福島県生まれ。日本児童出版美術家連盟・東京イラストレーターズソサエティ会員。高橋五山絵画賞、現代童画ニコン賞受賞。作品に「あかいかさ」「おおきいちいさい」「いろいろサンタのプレゼント」「くじらのプワプワ」「なみだがボロロン」「光り堂」「かくえきていしゃのゆっくりくん」など多数ある。
※絵本より引用