昔は赤い素敵なおうちに住んでいたおばあさん。
長い年月がたち、おうちも古ぼけてきました。
そこでおばあさんは荷造りをすると、お引越しをすることにしました。
ロバと牛と猫二匹を連れて、みんなでお家探しです。
おや、おばあさんは家の中に、めざまし時計を忘れたまま、出ていってしまいました。
しばらく歩くと黄色のおうちを見つけました。
誰も住んでいなようなので、荷をほどき、ここに住むことにしました。
屋根裏部屋にはねずみがいて、ネコたちはえらく気に入った様子。
牝牛は、甘いクローバーがたくさんあるこの庭を気に入っています。
ロバにバケツに水を汲んで持って行き、新しい家の感想を聞いてみると、
バケツの水は嫌だ。小川の水が飲みたいよ。こんな家はいやだよと言いました。
おばあさんは新しいおうちを探そうと、また荷造りをして、みんなで歩き出しました。
すると今度はみどりのお家を発見しました。
小川も近くにあり、これはいいと住むことに決めました。
すると、今度は牝牛がクローバーが少ないとご機嫌斜め。
そして今度は背の低い小さなピンク色のお家を見つけてお引越し。
ここならクローバーもあって、小川もあるので、きっとみんなが気に入ってくれるはず。
しかし、今度は屋根裏部屋がなかったようで、ネコたちはねずみがいないとすねています。
そして、おばあさんはみんなでまたまた引っ越すことになりました。
今度は小川もあって、クローバーもあって、屋根裏部屋があります。
白い綺麗なおうちです。
しかしペンキを塗っている男の人が近くにいて、もう誰かが住んでいるのかもしれません。
おばあさんはおじいさんに声をかけると、
ここは誰も住んでいないよとおじいさん。空き家をペンキで塗ってきれいにしているそう。
おばあさんはここに住むことにしました。
中に入って荷ほどきをしていると、
備え付けの家具の上に見覚えのある目覚まし時計を見つけました。
最後なんとなくオチがわかってきましたが、
お家の色が違うだけで、全く別のおうちに見え、
子どもも目覚まし時計でようやく、
おばあさんがまた同じ家に戻ったことに気が付いたようでした。
結局、いつもと同じが落ち着くし、居心地がいいのでしょうね。
おばあさんは長い長い旅をしたみたいに、いろんなお家に住んでみて、
やっぱり自分の住んでいたお家が一番と改めて気づいたのかもしれません。
動物たちの声に耳を傾けて、家族同然に気持ちを大事にしているおばあさんの
やさしさがとても素敵な絵本です。
《著者紹介》
作:エドナ・ベッカー
1898年、アメリカ合衆国カンザス州に生まれる。カンザス大学卒業後、少年少女向けのお話、劇、詩などの創作に従事する。
訳:神沢利子(かんざわとしこ)
1924年、福岡県生まれ。北海道、樺太で幼少期を過ごす。文化学院文学部卒業。
詩、童謡、絵本、童話、長編と、さまざまなジャンルの児童文学で活躍を続けている。
61年に『ちびっこカムのぼうけん』(理論社)を出版後、『くまの子ウーフ』(ポプラ社)『ふらいぱんじいさん』(あかね書房)『銀のほのおの国』など次々に出版。
『流れのほとり』で日本児童文芸家協会賞、『タランの白鳥』(以上、福音館書店)でサンケイ児童出版文化賞大賞など、多数の賞を受賞。絵本に『ぽとんぽとんは なんのおと』『いいことって どんなこと』『ちいさな き』『鹿よ おれの兄弟よ』(以上、福音館書店)など多数の作品がある。東京都在住。
訳:山田ルイ(やまだるい)
1947年、神沢利子の長女として、兵庫県で生まれ、横浜で育つ。大学卒業後、
障害児教育の学校に24年間勤務する。教職を退職した1995年より、神沢利子の助手及び事務方としての仕事を始め、現在に至る。東京都在住。
絵:白根美代子(しらねみよこ)1924~1998
東京都生まれ。梅原龍三郎に師事し、1951年東京藝術大学油絵科を卒業。文藝春秋画廊等で個展。身近な風景や人物を中心に、30~50号の作品を好んで描く。絵本に『おいしいもの つくろう』、「かがくのとも」に『おおばこ』『はまひるがお』『すすき』
『おとうさんは ひつじかい』(以上、福音館書店)『あいうえおっとせい』(さ・え・ら書房)などがある。
※絵本より引用
【作:エドナ・ベッカー 訳:神沢利子・山田ルイ 絵:白根美代子
出版社:福音館書店】