ミレドーさんのお店は老舗の楽器店。
いつもお店はお客さんで大賑わいで、楽器を磨いたり、手入れする暇もないぐらいに
忙しいお店です。
でも楽器はいつもピカピカ輝いていて、美しい音色と評判です。
それには秘密がありました。
楽器店で売られている古くて小さな太鼓には小人が住んでいました。
ミレドーさんは昔おじいさんから「たからものだよ」と譲り受けたことをすっかり忘れて、
売り物としてお店に置いていました。でもあまりに売れないので、安くして売り出すことに。
するとすぐに靴屋の店主が太鼓を買っていきました。
ミレドーさんは太鼓の中に小人が住んでいることを知りませんでした。
靴屋のクッツリーニさんのお店はそれからというもの、
不思議なことが起きていました。
日に日にお店に置いている靴がピカピカになり、山ほど靴が売れていきました。
小人たちは夜になるとクッツリーニさんのお店の靴をピカピカに磨きました。
でもおかしいなぁこの楽器どんなに磨いても音が鳴らないなぁ~と
言いながらますます磨き上げました。
すると今度はお客さんが靴の底がツルツルになってすべって転んでしまいました。
靴やどんどんピカピカになるのに、売れなくなっていきました。
ミレドーさんのお店はというと、太鼓がなくなってから、
楽器はピカピカではなくなってしまい、音色もいい音が出なくなってしまいました。
困り果てていると、クッツリーニさんが怒りながら太鼓を返しにきました。
ミレドーさんは夜中まで楽器を磨いて、そろそろ寝ようとしていたとき、
太鼓から楽しい歌が聴こえてきて、何人もの小人が出てきて、
楽器をピカピカに磨いているのをそっと見ていました。
まるでゆかいな演奏会。
それからミーさんは太鼓は売らずに、大切にしました。
宝物は自分のうんと近くにあるもの。
時にはその宝物が古ぼけて、真新しく見えないかもしれませんが、
きっと自分にとって特別なもの。
宝物は遠くにあるのではなく、あなたの近くに存在していますと
語り掛けてくれる素敵な絵本です(*^-^*)
イラストレーターのひだきょうこさんの絵は独特な世界観を醸し出し、
音楽という目には見えないの音色を、イラストで豊かに表現されています。
《著者紹介》
作:ひだきょうこ
イラストレーター・絵本作家。主な著書に「ホロンのうたのかい」(偕成社)「むぎちゃんピクニックシート」(ますだゆうこ/作 偕成社)「うさぎのしるし」(あかね書房)「もりのオンステージ」(角野栄子/作 文溪堂)「プンプンペリーニョ」(学研)「そっとしておいて」(井上よう子/作 佼成出版社)「まほうのケーキをつくりましょ」「もうすぐってどのくらい?」(教育画劇)などがある。「パピネロ」はLettr’Ange社よりフランスで出版。
※絵本より引用
【作:ひだきょうこ 出版社:教育画劇】