森の中でピアノに出会ったこぐまのブラウン。
さわっているうちに、だんだんと弾けるようになって、
森の動物たちもブラウンのピアノの音色にうっとり。
ある日、人間の少女と男の人が、森でブラウンのピアノの演奏を聴き、
ブラウンに街に来て演奏してみないか?と誘います。
ブラウンは森に大好きな仲間もいたし、とても迷いました。
でも街にはたくさんの音楽があふれていて、
ピアノも、大きなコンサートホールもあると知って、好奇心が湧いてきました。
仲間と離れるのは寂しかったブラウンでしたが、少女と一緒に街へ旅立つことを決意。
ブラウンのピアノは街でもたちまち有名になり、
気付けばブラウンは大きなホールの上で、多くの観客の拍手を受けていました。
みんながブラウンのピアノに魅了されています。
ブラウンもたくさんの人に喜んでもらえ、たくさんの音楽にあふれるこの街が好きです。
でも何かが足りない?なんだろう。ブラウンは考えました。
そしてブラウンはまた森に帰ることにしたのです。
大好きな仲間に会うために。
森に帰ると、仲間が待っていてくれました。
森のピアノの周りには街で活躍しているブラウンの写真や、記事が切り抜かれて
飾られていました。ずっと会っていなかった仲間たちはブラウンの活躍を、
喜び、ブラウンの夢を応援してくれていたのです。
ブラウンはたくさんの友人に囲まれながら、森の中でピアノを演奏しました。
とても幸せな気持ちでした。
どんなに遠く離れても、ずっと会えなくても、みんなといつも心はひとつ。
ブラウンのピアノは大切な仲間と過ごした時間が育んだ作品なのだ。
どんなに有名になっても、新しい出会いがあっても、
ブラウンは、ずっと森の仲間たちのことを忘れる日はありませんでした。
大きなスケール感の中で、ピアノの音色が響きわたってくるような、
奥行きのある世界観が広がります。
【作:デイビッド・リッチフィールド 訳:俵 万智 出版社:ポプラ社】