夜私たちはたくさんの夢を見る。
夢の中ではどんなに長距離を走っても、疲れないし、
体がみょうに軽い。
美味しいものを食べているのに、匂い、熱さはさほど感じない。
時に、ちょうちょや動物も人間よりも大きくなったり、
夢の中では何もかもが自由だ。
夢の中だけでなく、起きている時も私たちの想像は自由なのだ。
あまりに表紙の美しさに惹かれて手を伸ばしてみたら、
ちょっと不思議な世界。少し怖いような、わくわくするような世界が広がる。
すべてのページがだまし絵になっていて、
セーラ・L・トムソンの詩が散りばめられている。
カーテンをハサミで切り裂けば、そこには夜景の街が浮かび上がる。
夜寝ている時に、部屋に現れる影が人に見えたり、動いたように見えたことはないだろうか?
そうした日常の目の錯覚を、美しく表現していて、なおかつ面白い。
表紙の絵もよく目を凝らすと、水面に移っている木の絵が、
いつの間にか湖から女性が上がってくる絵になっている。
夢の世界と現実の世界の境界線にある世界に落ちたような不思議な絵本。
《著者紹介》
文:セーラ・L・トムソン
作家。主な著書に、ヤングアダルト小説『ドラゴンの息子』、絵本『星としま模様-アメリカ国旗のはなし』など。ニューヨーク在住。
絵:ロブ・ゴンサルヴェス
カナダのトロントに生まれる。シュールレアリズムに影響を受け、特にレメディオス・
バロ、ルネ・マグリットに感銘を受ける。大学卒業後、建築家として働くかたわら、
舞台のセットや壁画を手がける。1990年トロント屋外美術展で絶賛され、本格的な創作活動を開始、高い名声を得ている。
翻訳:金原 瑞人
岡山県生まれ。法政大学教授、翻訳家。
訳書に、ロバート・ニュートン・ペック『豚の死なない日』(白水社)、アレックス・
シアラー『青空のむこう』(求龍堂)、デイヴィッド・アーモンド『火を喰らう者たち』(河出書房新社)など、多数。
※絵本より引用
【作:セーラ・L・トムソン 絵:ロブ・ゴンサルヴェス 訳:金原瑞人
出版社:ほるぷ出版】