★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

くさはら

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くさはら

絵が酒井駒子さん。文が加藤幸子さん。

 

酒井駒子さんの子どもに向ける優しい視線が大好きです。

 

 

家族みんなで川あそびに来たゆーちゃん。

 

ゆーちゃんは、足元に飛んできただいだいいろのちょうちょうが目につきます。

 

家族のいる川とは違う方向へ、ちょうちょうが飛んでいきます。

 

ゆーちゃんはきれいな、ちょうちょうを追って草の茂みにはいっていきます。

 

ちょうちょは草はらの上をすいすいと泳ぐように飛んでいきます。

 

ゆーちゃんはそれを追いかけて、腰まである草むらをかきわけながら、

 

ずんずんと奥へ進んでいきます。

 

長い葉っぱ、丸い葉っぱ、ギザギザの葉っぱが、足をこちょこちょとくすぐります。

 

スーとした臭いがします。

 

風がザーッと音をたてて拭きました。

 

草はらはまるで海の波のように揺れています。

 

お腹も、肩もその中に沈んでいきます。

 

草の上に出ているのは、帽子と顔だけ。

 

背の高い草に取り囲まれてしまいます。

 

葉っぱたちはだまって見下ろしています。

 

ちょうちょが見えなくなりました。

 

ピョーンとバッタさんが飛びついて、またどこかへ行ってしまいました。

 

動いたらピシっと葉っぱがほっぺをぶち、泣きたくなり目をギュッとつぶりました。

 

急に色んな音がいちどきに聴こえてきました。

 

ザワザワ、カサコソ、ジージー、ピッピ。キリリ、コロロ。

 

遠くの方で川がシャラシャラ歌います。

 

そのときママが『ゆーちゃん、何しているの?』と笑っていました。

 

子どもの時夢中になって木登りをして、思った以上に高く感じて怖くなって、

 

降りられなくなったこと。

 

前へぐんぐんと歩いてきたけど、振り返ったら、さっきまで一緒にいたお友達が

 

いなくなっていて、急に心細くなった時のこと。

 

買いものいった時に、ママを見失い、泣いたこと。見つけられた時のホッとした気持ち。

 

そんな子供のころの淡い日常の一コマを思い出しました。

 

風が吹いて、草が漂う雰囲気や、子どもが一心に見つめる姿など、

 

子どもの純粋無垢な表情が見事です。

 

文:加藤幸子(かとうゆきこ)

1936年、北海道生まれ。子どものころから生き物に親しみ、現在も小説を書きながら野外での動植物の観察を楽しむ。主著に『夢の壁』(1983年 第88回芥川賞受賞)、

『長江』、『家のロマンス』、『〈島〉に戦争が来た』(以上、新潮社)、

『蜜蜂の家』、『茉莉花の日々』(ともに理論社)、『鳥よ、人よ、甦れ』(藤原書店)、『ナチュラリストの生きもの紀行』(DHC)などがある。

 

絵:酒井駒子(さかいこまこ)

1966年、兵庫県生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。絵本に『よるくま』、

『金曜日の砂糖ちゃん』(2005年ブラティスラヴァ世界絵本原画展金碑、ともに偕成社)、『きつねのかみさま』(2004年日本絵本賞、ポプラ社)、『よるくま クリスマスのまえのよる』、『BとIとRとD』(ともに白泉社)、『ぼくおかあさんこと…』(文溪堂)、『こりゃ まてまて』(福音館書店)など。

※絵本より引用

【文:加藤幸子 絵:酒井駒子 出版社:福音館書店

 


くさはら (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)