しろうさぎは森の中の、小さなおうちに生まれました。
しろうさぎに必要なものは全部そろっています。
おかあさんに、おとうさん、赤いクレヨン。ふかふかのベッド、
おかあさんが作ってくれる温かい食事。、そしてお庭にはりんごの木が一本。
秋が終わると、うさぎの母さんは、りんごをお砂糖で煮てジャムを作ったり、
シロップのなかにつけこむコンポートを作ります。
ある日、しろうさぎは初めてりんごのジャムを食べ、あまりの美味しさに驚きました。
おかあさんが、お庭のりんごの木の実よっと教えてもらい、
さっそく見に行っていっぱいりんごを食べてみたいと思いました。
まだ生まれて1年経っていないしろうさぎは、リンゴの実が秋になるのを知りません。
玄関を飛び出し、リンゴの木の前にやってきて、がぶりと木の幹をかじりました。
全く美味しくなく、とても硬くて、痛くて、泣き出しました。
おかあさんは秋にならないとまだ実はならないのよと言いながら笑っていました。
秋になるまでどのぐらいかかるのだろう?
リンゴの実どうやって赤くなっていくのだろう?
生まれたばかりのしろうさぎには、果てしないことにように感じました。
でも何も心配はいりません。このいえには、しろうさぎのひつようなものは
すべてそろっているのですから。
全てそろっているというフレーズが最初と最後のページに出て来ます。
両親の温かい愛情や、いつも安心できる場所が当たり前にあること、
疑うことのない信頼に包まれて、自分が帰る場所があるということなのでしょう。
だから何も心配せず、季節の移ろい、時間の経過をゆっくり待って居よう。
読みながら幸福に包まれ、そっと後ろから包み込まれたような、抱きしめられたような
気持ちになりました。
子どもらしい時間軸、感性がみずみずしく描かれています。
子どもとの読み聞かせにももちろんのこと、
まずお母さん、お父さん、大人に読んでもらい一冊です(*^-^*)
《著者紹介》
作:石井睦美(いしいむつみ)
神奈川県生まれ。『五月のはじめ、日曜日の朝』(岩崎書店)で毎日新聞小さな童話大賞と新美南吉児童文学賞。駒井れん名義『パスカルの恋』(朝日新聞社)で朝日新人文学賞、絵本の翻訳『ジャックのあたらしいヨット』(BL出版)で産経児童出版文化賞大賞、『皿と紙ひこうき』(講談社)で日本児童文学者協会賞。作品に「わたしはすみれ」シリーズ(偕成社)、『しずかな しずかな クリスマス・イヴのひみつ』(BL出版)、『ビッグバンのてんじくネズミ』(文溪堂)、『兄弟パズル』(ポプラ社)、
『愛しいひとにさよならを言う』(角川春樹事務所)、『都会のアリス』(岩崎書店)など多数。
絵:酒井駒子(さかいこまこ)
兵庫県生まれ。『きつねのかみさま』(ポプラ社・作:あまんきみこ)で日本絵本賞。
『金曜日の砂糖ちゃん』(偕成社)でブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌賞。
『ゆきがやんだら』(学研)はオランダで銀の石筆賞を受賞。『ぼくおかあさんのこと…』(文溪堂)では、フランスでPITCHOU賞、オランダで銀の石筆賞を受賞。絵本に
『よるくま』(偕成社)、『ロンパーちゃんとふうせん』(白泉社)など多数。
※絵本より引用