4匹のこぐまに、くまのおじいさんが本を読んであげました。
その本は『りっぱなくまがするべきことがよくわかるほん』。
よく木にのぼり、よくひるねをし、よくさんぽし、よくさかなをつるべしと
4カ条が書かれていました。
こぐまたちは立派なクマになれるように、努力しましたが、
どれも上手くいきませんでした。それどころか、面白いと感じませんでした。
こぐまたちはその代わりに、それぞれの特技を極めました。
ひとりのくまが、もうひとりのくまを空中に放り投げ回転したり、
なわでわっかをつくったり、木でバイオリンを作って奏でたり、
さらには、その特技を一本縄の上でも披露できるようになったこぐまたち。
こぐまたちは、ぼくたちの特技のほうがずっとおもしろいし、
りっぱなくまでしょう?と自信満々。
おじいさんはそんな特技では立派なくまにはなれないと怒りました。
おじいさんは見本をみせてやると意気込んで、木にのぼりトラブルにあいました。
そのトラブルから救ったのがこぐまたちの特技でした。
おじいさんは読んできた本を閉じ、こぐまたちの特技を眺めるようになりました。
こぐまたちは大人たちの理屈や常識じゃなくて、感覚、本能で、
楽しいこと、喜び、を知っています。
こぐまが特技を披露しているときの、嬉々とした表情がモノクロの絵で、
豊に表現されています。
正しいことよりも、楽しいこと、心地いいことに生きる喜びを感じているこぐまさんから、
大人は反省する心が、子どもは共感できる楽しい絵本になっています。
《著者紹介》
ロサンゼルス生まれ。高校卒業後、ニューヨークのブラット・インスティチュートでイラストレーションを学んだ。1971年『ふたりはともだち』(文化出版局)、1972年『よるのきらいなヒルディリド』(富山房)でコルデコット・オナー賞を、1981年『ローベルおじさんのどうつものがたり』でコルデコット賞を受賞。代表作に『ふたりはいっしょ』『どろんこぶた』(以上、文化出版局)などがある。
訳:こみやゆう
東京都生まれ。翻訳家、編集者。東京阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰。
実家は児童書専門店を経営。祖父はトルストイ文学の翻訳家、北御門二郎。訳書に「テディ・ロビンソン」シリーズ、『そんなとき、どうする?』(以上、岩波書店)、
「ぼくはめいたんてい」シリーズ(大日本図書)、『やさしい大おとこ』(徳間書店)など多数。
※絵本より引用
【作:アーノルド・ローベル 訳:こみやゆう 出版社:好学社】