ある日ママに、ひとりで牛乳を買ってきてとおつかいを頼まれた女の子。
いつも何度もママと一緒に歩いた道、買い物にいったお店なのに、
一人だとどうしてこんなに心細いのだろう?
すれ違う自転車や、車の音がいつもより大きく聞こえて、
何度も通った場所なのに、ちゃんとたどり着けるのか心配になる。
ママから預かったお金を握りしめた手は、汗ばんで、お金も自分の手のひらの温度で、
しっかり温まっている。
いつもは道端に咲いているお花も目に入らず、
いつもの見慣れているはずの景色が、まったく知らない世界みたいに見える。
もうすぐお店だと、走り出した途端に、こけて、
足も手もジンジン痛いのに、手から離れて転がったお金が心配で、痛みを忘れる。
お店について、勇気を振り絞って、『すみません。』って発した声が、
思ったよりも小さくて、頼りなく誰にも気づいてもらえない心細さ。
もう一度声を出してみたけど、今度は近くを通った車の音にかき消される。
胸のドキドキする音が聞こえてしまいそうなぐらい、大きく激しくなる、
瞬きをするたびに、シュパシュパと音がする気がする。
深呼吸をして何度も『すみません』と言うと、
ようやくお店の人が気づいてくれた。ママに頼まれた牛乳をくださいと言うと、
牛乳を出してくれて、お金もちゃんとお店の人に渡して、
嬉しくて、早くママの待つ家に帰らなくては、とおつりも貰わず走り出す。
お店の人も追いかけて、おつりを渡してくれる。
ママと赤ちゃんが坂の下で待っていてくれ、一緒におうちまで帰りました。
はじめてのおつかいのドキドキとしながら、ありったけの勇気を振り絞って、
牛乳を一つ買うまでの、女の子の心情、成長を描いています。
一緒にハラハラドキドキを共感しながら、勇気をもらえる絵本。
はじめてのおつかいに限らず、はじめて挑戦することを応援してくれる絵本です。
《著者紹介》
文:筒井頼子(つついよりこ)
1945年、東京に生まれる。埼玉県立浦和西高等学校卒業。
童話に『ひさしの村』『いく子の町』(現在品切れ)、絵本に本書のほか、『あさえとちいさいいもうと』『いもうとのにゅういん』『とん ことり』『ながれぼしをひろいに』『おでかけのまえに』『おいていかないで』(以上福音館書店)などがある。
宮城県在住。
絵:林明子(はやしあきこ)
1945年、東京に生まれる。横浜国立大学教育学部美術科卒業。
『かみひこうき』が初めての絵本。筒井頼子さんとの絵本のほかに、『ぼくのばん わたしのばん』『きょうはなんのひ?』『おふろだいすき』『はっぱのおうち』『10までかぞえられるこやぎ』、自作の絵本に『まほうえのぐ』『こんとあき』『くつくつあるけのほん(全4冊)』『クリスマスの三つのおくりもの(全3冊)』『でてこい でてこい』、幼年童話に『はじめてのキャンプ』がある。挿絵に『魔女の宅急便』『なないろ山のひみつ』(以上福音館書店)がある。長野県在住。
※絵本より引用