毎日すっきりとしない梅雨空で、毎日どこかで強い雨が降り続いています。
ユリー・シュルヴィッツの『あめのひ』という絵本は、
灰色一色に染まる景色の中に、こぼれる光を描いた作品です。
雨の日にも、私たちの周りに光は降り注いでいるんだと気づかされます。
まどにぴしゃぴしゃ、
やねにぱらぱら
まちじゅうをすっぽり雨色でうめつくす。
雨水が道に、川のような流れをつくり、
水たまりは小さな、湖のようだし、鏡のようだ。
空に虹の橋を描き、
草花も雨に濡れて、いきいきとしている。
雨上がり、鳥たちは水たまりの周りに降り立ち、遊んでいるよう。
水たまりにうつる空のかけら。
雨で、空が落ちてしまったみたいだ。
ユリー・シュルヴィッツの作品は、光がテーマになっているものが多いように思う。
光を描いた画家といえば、睡蓮の画で有名なクロード・モネを思い出す。
同じ光をモチーフにしているのに、光の捉え方は、それぞれ違うように思える。
雨の音、雨のにおい、雨がつっくた鏡、水たまりに落ちた空、虹、
こんなに雨の日は素敵で溢れていたかな?っと思える作品です。
どうしても憂鬱になりがちな雨の日ですが、たくさんの光と、恵みを
私たちに与えてくれているように思います。
《著者紹介》
作:ユリー・シュルヴィッツ
画才に恵まれていた両親のはげましもあって、3歳のときから絵を描き始めました。
4歳で第二次世界大戦にあい、ワルシャワを離れて各地を転々としたのち、1947年パリにつきました。ここでこの地方の中学校の美術展に入賞。1949年イスラエルに移り、15歳から17歳までは夜間高校に通いながら働きました。ついでテルアビブの教員養成機関で学び、文学の科目でよい成績を残しました。
1959年にアメリカに渡って、2年間ブルックリンの絵画学校で学び、ニューヨークの出版社で、ヘブライ語の子どもの本のための新しい絵のスタイルを見いだし、1963年に『ぼくのへやの月』を出版、続いて『月ようの朝』、『あめのひ』(1969年)を出版。
この3作は、ストーリー・絵ともにシュルヴィッツのものです。
ほかに他の人のストーリーにも多くのすぐれた絵をつけています。
1969年には『空とぶ船と世界一のばか』(岩波書店)がカルデコット賞を受賞し、
またこの本と『あめのひ』は、それぞれ1968年、1969年にアメリカ図書館協会の選定図書に選ばれました。
※絵本より引用
【著/編:ユリー・シュルヴィッツ、矢川澄子 出版社:福音館書店】