岩崎ちひろさんの絵で、とくに雨の描写の絵や作品が好きです。
たくさんの色が混ざり合いながら、それでも透明感を失わない絵は、
私の中で雨の情景にぴったりと来ます。
女の子が、雨の日にひとりでお留守番をしているお話。
お母さんがいない心細さ、寂しさが、雨とともに表現されています。
おもちゃのピアノを弾けば、雨の音似ているなと思ったり、
窓から外を覗けば、雨の日ってこんなに色鮮やかだったかしらと感じたり、
電話が鳴り、思わずカーテンの中に隠れてみたけれど、
ずっと音が聞こえてきちゃう。
心細くなってきて、曇った窓ガラスに、指で絵を描いて、
忘れてみたり。
ママ、はやく帰ってきてと女の子の声は、
雨に洗い流されていくように、刻々と時間はすぎていく。
ゆっくり過ぎていくようで、ながいながい時間こうしていうように。
お母さんがかえってきたページは、今までの雨の寒々しい色彩と大きく変化して、
黄色やオレンジなどのぬくもり感じる温かい色で、女の子を包み込んでいて、
女の子がママに抱かれているように感じます。
ほっと読者も安らぎを感じます。
水彩画で、何度マネをして、水を多めに絵具をといて、描いたことか。
でも一度たりとも岩崎ちひろさんのような透明感はでませんでした。
それでいて、立体感や奥行きも感じられ、ページのすみずみまで、
ジィーと長い時間眺めていても、飽きない絵です。
詩的な短い言葉がぽつりぽつり、水面に静かに波紋を広げていくように、
繊細な水彩画とマッチしていて、心地よい絵本の世界に引き込まれます。