ノルウェーの昔話で、世界で読まれている名作絵本のひとつです。
なかなか結末がおどろおどろしいので、子どもへの読み聞かせをためらっていました。
小さなやぎ、中ぐらいのやぎ、一番おおきなやぎは、三匹とも名前が、がらがらどん。
3匹は太るために、大きな橋を渡り、山へ草を求め歩いていました。
この橋の下には大きくて気味の悪いトロルが住んでいました。
まず一番小さなやぎが橋を渡ろうとすると、
トロルが「俺の橋を揺らすのはだれだ?ひとのみしてやろう。」と言いました。
小さなやぎはもう少し待てば、僕よりも大きな、がらがらどんがやってきます。
と言い、トロルは見逃します。
二番目に中ぐらいのがらがらどんが、橋を渡ると、
トロルがまたしても、ひとのみするぞ~と言いました。
すると、もう少し待てば、もっと大きながらがらどんが来ると伝えると、
トロルは中ぐらいのヤギも見逃しました。
最後のがらがらどんがやってくるとトロルは、
「なにものだ!俺の橋をがたぴた揺らすのは」と怒鳴りました。
すると「おれだ!大きいやぎのがらがらどんだ!」大きくしゃがれた声で言い、
トロルがひとのみしてやるぞ~と言うと、
二本のやりでめだまをさし、肉も骨も粉々に踏み砕くぞ!と言って、
大きいやぎがトロルをやっつけました。というお話。
最初はなんて残酷な終わり方なんだろうという感想を持ちました。
でも、人も動物や魚、生きものを刻んで食べているんだよなぁと、
何とも言えない気持ちに。
この絵本の伝えたかったメッセージはなんだろう?
三匹のやぎの立場に立ってみると、なぜ小さなヤギから先に橋を渡らせたのだろうか?
先に大きなのが渡って、トロルを退治する方法があったのではと。
でも仮にそれが上手く行かなかった場合3匹とも命がなかったかもしれない。
小さいやぎも、中ぐらいのやぎも、戦うことをせず、大きいやぎを頼り、
心理戦で命を守ったことになります。
時には真正面から戦うのではなく、頼る、逃げることも大事。
トロルの立場にたてば、欲張ってしまったことによって、
命を落としてしまうことになりました。
小さいやぎも、中ぐらいのやぎも食べるという選択肢もありました。
もっと大きなものを食べたい欲望から、結局トロルは何も食べることなく、
自分の命を落としてしまいました。
生きるための知恵が詰まっている絵本です。
《著者紹介》
絵:マーシャ・ブラウン
1918年、ニューヨーク州に生まれる。物語を読んだり、聞いたり、絵をかいたりすることの好きな一家に育ち、幼いころから絵本に強い興味を持つようになった。ニューヨーク師範学校を卒業後、3年間高校で教えた後は、ニューヨーク公共図書館に勤務し、子どもの本についての知識を深める。その間、国吉康雄などについて絵の勉強もした。
『メリーゴランドがやってきた』(ブック・グローブ社)がデビュー作。一作一作異なる画材や画風を使い分け、昔話や創作など、数々のすばらしい絵本をつくる。『シンデレラ』(福音館書店)、『むかし、ねずみが…』(童話館出版)、『影ぼっこ』(ほるぷ出版)で、3度コールデコット賞を受賞している。カリフォルニア州在住。
訳:瀬田貞二(せたていじ)
1916年、東京に生まれる。東京帝国大学で国文学を専攻。戦後、『児童百科事典』(平凡社)の企画編集者をふりだしに、障害にわたって、児童文学の評論、創作、翻訳などを手がけ、大きな業績をのこした。
著者に『落穂ひろい』(第36回毎日出版文化賞特別賞他)『絵本論』(以上福音館書店)、訳書にL・H・スミス『児童文学論』(共訳)『ナルニア国ものがたり』(以上岩波書店)、絵本に『きょうはなんのひ?』(第2回えほん日本賞)『かさじぞう』、
絵本の翻訳に『チムとゆうかんなせんちょうさん』『げんきなマドレーヌ』(以上福音館書店)など多数。
※絵本より引用
【作:ノルウェーの昔話 絵:マーシャ・ブラウン 訳:瀬田貞二
出版社:福音館書店】