真っ黒な表紙に、色鮮やかな怪物たちが目を引きます。
表紙を開くと立派なお城が出てきた思いきや、お城にはいくつもの目があり、
獣のようなしっぽ、6本の足があり、ゆっくりとお城を歩き出します。
ある静かな夜、怪物園はうっかり玄関口をあけたまま、眠りにつきました。
その間に、お城にいた怪物たちは外の世界へ。
街は怪物の行進であふれかえり、人々は恐ろしくて、家の中に逃げ込みました。
怪物たちはその後も何日も行進を続け、外に出られなくなった子供たちは、
家の中で退屈していました。
そこで、子どもたちは段ボール箱をバスに見立てて、空想の旅に出かけることに。
ページをめくると、さっきまでの真っ暗闇の絵から、
メルヘンの世界のような明るく、美しい絵に変わります。
虹の橋を何本もバスで通り抜け、お城や、色とりどりの花畑が広がる世界です。
ふと、街のとおりに目を向けると、まだ怪物がたちが練り歩いています。
怪物はヒヨコのような形のものや、イカのように足が何本もあるもの、
カタツムリに似た怪物など、どこかで見かけたことがあるような形をしていて、
怖いのに、一方で親近感も覚えます。
子どもたちは空想の旅を続けました。
植木鉢のひとつ、ひとつに、小さなカラフルな家がたちならび、
一番大きな鉢植えには大きな大木が。
子ども達は岬の先端までくると、赤い大きな風船を膨らまし、バスは、
風船気球に変身です。
大きな大木の上まで行ってみよう。
ふと、街を見下ろすと、まだ怪物たちが行進を続けていました。
どこからか、お母さんの声がします。おーふーろー
子どもたちはお風呂に入りながら、空想の世界を旅します。
子どもたちを乗せた風船気球は、ついに大木のてっぺんまでやってきました。
双子の灯台を抜けると、木の葉の海です。
船があったらいいなぁ~!子どもたちのバスタブに帆を張り、
木の葉の大海原へくりだします。
海の下から何か声が聞こえるよ。
みんなで潜ってみよう。
子どもたちは船の帆をたたみ、頑丈な屋根に変え、バスタブの船は潜水艦に。
真っ暗闇の海をライトで照らしながら進んでいくと、海の底に怪物たちの姿が。
怖いけど、何か困っているみたい。助けてあげよう。
子ども達は怪物たちを船に乗せて、怪物園に戻してやりました。
そしてその日ベッドで眠りにつきました。
朝になると、街の通りから怪物たちはいなくなっていました。
空想の中の、空想のお話のような、不思議な絵本です。
真っ暗闇のページと、子どもたちの空想する明るい絵のページの対比が、
美しく、ドキドキしたり、ホッとしたり。怖くなったり、
温かい気持ちになったり。
コロナ禍でなかなか思うように外出ができない私たちの生活、子どもたちの毎日と、
すこしリンクするような絵本です!
空想の世界はどこまでも自由に広がっていて、とどまることを知りません。
どの怪物たちもどこかで見かけたことがあるような風貌で、
気味が悪いのに、かわいくて、憎めない存在です。
【作:junaida 出版社:福音館書店】