ここは色を持たない世界。辺りは灰色一色。もしくは黒か白でした。
そのころをはいいろのときと言いました。
晴れていても、どんより曇っている日も、ずっと変わらず灰色なのでした。
魔法使いは地下室にそっとこもると、魔法の薬を作って、呪文を唱え、
ツボの底に水色の液ができました。
その水色で、辺り一面を水色に染め上げました。
家も、人も、動物も、植物もみんな水色です。
あおいろのときが始まりました。
灰色から水色になり、初めて世界に色を持ち、最初みんな喜びに沸きました。
しかし、しばらくすると、なんだか悲しい気持ちになってきたのです。
あおいろのときは、だんだん、憂鬱でたまらなくなりました。
みんなが笑わなくてなってしまったことに気が付いた魔法使いは、
地下室にこもると、魔法の薬を組み合わせ、呪文を唱え、
今度は黄色を作りました。
そしてまた世界すべてを黄色に塗り替えました。
きいろのときの始まりです。
みんなが陽気な明るい気持ちになりました。
しかししばらくすると、目がチカチカするように・・・
そこで魔法使いは次に赤色をつくりだすと、
みんなで世界を真っ赤に染め上げました。
眩しくはなくなりましたが、今度はなんだかみんな落ち着きがなくなり、
おこりっぽくなり、喧嘩が絶えませんでした。
魔法使いは毎日色をつくりながら途方に暮れていたある日、
あんまりにいっぱい色をつくったので、あふれ出し、色んな色が混ざり始めました。
魔法使いは色と色を混ぜると、新しい色が生まれることを知りました。
そこでたくさんの色を掛け合わせ、新しい色を次々に生み出しました。
今度は世界中を単色ではなく、カラフルに染め上げました。
色が人に与える印象だったり、効果だったり、色によって、人々の感情が変化していく
姿が楽しいですし、単色しかない世界だと、バナナもリンゴも同じ色。
味は違うかもしれないけど、色が違うと食欲もわくのに、同じだとわかないねと
子どもと話しながら読み聞かせしました。
また色を混ぜると新しい色が生まれることも子どもにとって大きな発見だったようで、
青と赤を混ぜたら何色になるかな?とクイズにしながら楽しく読み聞かせしました。
切り口がおもしろい一冊です!
【作:アーノルド・ローベル 訳:まきたまつこ 出版社:富山房】